固唾をのんで見守るウクライナ、ロシア、イスラエル、イラン――米大統領選「トラorハリ」でふたつの戦争はどうなる!?
誰も結果が読めない大接戦だからこそ、「どっちが勝ったらどうなるか」が気になるところ。アメリカの支援なしでは戦えないという共通点を持ちながら、置かれた状況は大きく違うウクライナとイスラエル。そして、背後のアメリカの存在をにらみながら両国と戦うロシア、イラン。ふたつの戦争はいったいどうなっていくのか? 【写真】高高度ミサイル迎撃システム「THAAD」と射程300㎞の地対地ミサイル「ATACMS」ほか * * * ■トランプが当選すれば、イスラエルは一気呵成 11月5日に行なわれるアメリカ大統領選挙の結果、来年1月に民主党カマラ・ハリス政権、共和党ドナルド・トランプ政権のどちらが誕生するかは、まさに「フタを開けてみないとわからない」大接戦になりそうだ。 その勝敗はアメリカの内政のみならず、国際社会にも大きな影響を与える。その最たるものが、ウクライナとロシア、イスラエルとイラン(ハマス、ヒズボラ)の戦争だろう。 現在進行形の戦争に対し、次期大統領がどんな手を打つかは、もちろんそのときになってみないとわからない。しかし、両候補のバックグラウンド(政権公約や過去の言動、政策アドバイザーの動向、党内情勢や議会との関係など)を分析すれば、ある程度確度の高い予測を立てることは可能だ。 まず、トランプが勝利した場合の対イスラエル政策について、米政界に幅広いコネクションを持つ政治アナリストの渡瀬裕哉氏が解説する。 「トランプを全面支援する政策研究機関『AFPI』(米国第一政策研究所)は今年5月、『アメリカ・ファースト・アプローチとナショナル・セキュリティ』という政策集を発表しています。 通底するコンセプトは〝アンチ中国〟ですが、イスラエルに関しては基本的に共和党の政策に近く、『イスラエル側に立つ』『イランを封じ込める』の2点が大前提です」 となると、イスラエルのネタニヤフ首相はどう動くか。10月17日にはガザ地区でハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏を殺害したとイスラエル政府が発表したが、国際政治アナリストの菅原 出氏は「これで戦争が終わることはない」と指摘する。 「イスラエルのナフタリ・ベネット元首相は『イランを攻撃する機会を逃すべきではない』と発言しています。以前はヒズボラとハマスの計十数万発のロケット弾が、イスラエルのイラン攻撃に対する抑止力として働いていたのですが、今は両組織の力がなくなったも同然だからです。 しかも今、中東にはイスラエルをイランのミサイル攻撃から守るために、F-22ステルス戦闘機部隊を含む米空軍の4個飛行隊、米海軍の空母艦隊、米海兵隊の強襲揚陸艦隊が展開している。米国防総省の内部からも、『この状況が変わらないうちにイスラエルはすべてを済ませたいと考えるだろう』との見方が上がっています。 仮にトランプが勝利すれば、来年1月の政権交代までバイデン政権は完全にレームダック(死に体)になり、イスラエルへの影響力もますます弱まる。トランプはイスラエルのネタニヤフ政権と水面下で接触し、『自分が大統領になるまでに片づけておいてくれ』と持ちかけるかもしれません。 そうすれば『ほら、俺が大統領になったから戦争は終わりだ』と言えますから」