JAXA、リュウグウの粒子が“微生物汚染”との論文に声明 「汚染はJAXA内のプロセスではない」と強調
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月5日、小惑星探査機「はやぶさ2」が回収した小惑星リュウグウの粒子が微生物汚染を受けたとする論文に対して声明を発表した。研究の公募時に提案されたテーマと異なるとしており、当初JAXAに伝えられていた論文の研究テーマは「リュウグウ粒子と地球上で見つかる微隕石との比較研究」だったという。 【画像を見る】電子顕微鏡で観察したリュウグウの粒子【全4枚】 論文は、英ロンドン王立大学のマチュー・ゲンゲ博士が、国際隕石学会の学会誌「Meteoritics & Planetary Science」に11月13日付で発表したもの。JAXAによる国際公募で採択された研究が元になっており、JAXAから分配されたリュウグウの粒子で実験をしたという。 実験では、リュウグウの粒子について、大気下でX線による断面画像の分析を行った後、片面を研磨して電子顕微鏡で観察した。結果、研磨した表面から繊維状や棒状の炭素物質を発見した。その形状と、継続して観察する際に確認した数の増減から、地球上の微生物「枯草菌」の可能性を指摘している。 ゲンゲ博士らは、リュウグウの粒子は窒素封入された状態でJAXAから届いているため、ゲンゲ博士らがX線分析か研磨をした際、汚染された可能性が高いなどと論じている。これを踏まえ、地球外の試料を取り扱う際の汚染管理の重要性を指摘。リュウグウの粒子から地球の微生物が見つかったことに対し、「微生物が汚染管理をかいくぐるのに長けていることを示しており、厳しい汚染管理の下で微生物が見つかったとしても、地球外に起源を持つ証拠にはならない」と述べている。
JAXAの主張は?
これに対しJAXAは、論文での言及通り、全てのリュウグウの粒子は窒素環境下で取り扱い、大気に触れることなく研究者に配分していると主張する。年1~2回の頻度で環境の検査をしており、有機物は米国航空宇宙局(NASA)の地球外試料の保管場所と同程度以下の濃度だった他、培地による微生物汚染の評価でも微生物のコロニーは検出されなかったことを確認しているという。 JAXAは「論文で述べられている微生物汚染はJAXA内のプロセスでは起きておらず、配分を受けた研究者の実験室環境で発生したものと推測する」として、汚染の原因がJAXA側にないことを強調。今回の論文は、公募時に提案された研究テーマとも異なるとして、「地球外試料の微生物汚染を目的とした本論文の内容に基づき試料分配の際の研究提案の評価・選定を行っていない」としている。
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