福島第一原発の処理水放出から1年、禁輸措置続く中国で北海道のイクラにホタテ…“闇流通”のナゾ
東京電力福島第一原発の処理水が海に放出され始めてから、24日で1年。中国では、いまだ日本の水産物の輸入停止措置が続いている。店頭で見かけるはずのない“日本産の魚”。しかし、中国の市場や料理店で“闇流通”している実態に迫った。
■処理水放出1年、中国から消えた“日本の魚”
8月上旬、訪れたのは中国・北京の海鮮市場。かつては、ここに日本のマグロやウニが所狭しと並ぶなど、中国は日本の水産物の最大の輸出先だった。しかし今、“日本産”の文字は消えている。 きっかけは、1年前に始まった福島第一原発の処理水の海洋放出だ。中国政府は対抗措置として、日本全国の水産物や水産加工品の輸入を全面的に禁止。違反者は法に基づき、厳しく処分すると発表した。中国の漁業関係者は「違反すれば、営業許可が一発で、はく奪される」と、おびえる。市場の店頭で売られていたウナギも平仮名と漢字で書かれ、一見、日本産かのように見えるが、裏面を見ると、生産地は中国・福建省。「日本産の魚を取り扱えるはずがない」「中国産のものに全て切り替えた」などと、販売員は口をそろえる。
■「入荷してない」一転…山積みになった“日本産の魚”
「一部の店舗で日本の水産品が今も裏取引されている」。この情報をつかみ、取材班は水産品を扱う「A店」に向かった。 中に入ると、店頭のショーケースにはロシア産やニュージーランド産の甘エビが並んでいる。 ――この店で日本の魚を買うことはできる? 「日本の魚は禁止されているよ。販売してないよ」 従業員に聞けば、この店では処理水放出以前、青森県産のイクラを販売し、人気を博していたという。「今は絶対に入荷できない」と、かたくなに日本の水産品の存在を否定した。 しかし、質問を繰り返していると、別の従業員が店の奥へと向かっていった。戻ってきた従業員が手にしていたのは、イクラ。箱を見ると“北海道産”と書かれている。賞味期限が3年間で、処理水の放出以前に入荷したものだという。 中国では、たとえ処理水の放出以前に日本から輸入した水産品であっても、販売は認められていない。しかし、行き場をなくした在庫が、闇で取引されていたのだ。時々、中国当局が巡回して監査に入るため、店頭では堂々と販売できないと嘆く。 そうは言うものの、悪びれる様子もなく、次から次へと私たちに日本産の商品を見せてきた。北海道産のホタテに、鹿児島県産のブリ。さらには、富山県の名物・白エビ。店の裏には日本の水産品が、たくさん残っているという。 日本産を求める顧客、特に、中国で日本料理店を営む関係者からの要望があり、高い価格で販売しているのだ。