「アジア和僑」は日本経済の発展につながるのか?
海を渡り、異国の地で起業する日本人の動きが活発化しています。こうした人たちは、中国の「華僑」になぞらえて「和僑」と呼ばれることがあります。以前、アフリカを目指す若者たちについてお伝えしましたが、和僑が活躍するのは、当然のことながらアジアが特に目立ちます。アジア和僑の動きや将来について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの齋藤禎氏に聞きました。
なぜ中国和僑が増えたのか?
和僑会の始まりは、10年前の香港和僑会の設立。その後、上海和僑会、タイ王国和僑会が、2009年に、北京和僑会が2010年に立ち上がるなど、中国主要都市やASEAN諸国に広がっていきました。 齋藤氏は「90年代から飲食など含めて中国に進出する動きがあったが、大手企業の駐在のコミュニティではなく、和僑のように起業家同士で連携、つながりを持ち始めたのは2000年代半ばごろからではないか」と説明します。業種は、飲食からアパレル、建築など多岐にわたります。 中国で和僑が増えた理由は大きく分けて2つあるといいます。一つは中国で台頭しつつあった「新中間層」狙い、もう一つは、リーマンショック後も成長を続けていた中国経済の活力です。 「個人の企業家が進出するには、ある程度の市場の成熟度が必要だった。中国ではまず沿岸部、上海から始まるのは必然だったが、背景には中国での新中間層の急速な拡大がある。 また当時の中国は、世界経済が全体的に落ち込む中、リーマンショックでも影響受けずに成長続けていた。中印では新中間層が台頭していて、中国はその中でも筆頭。そんな中国に対してビジネスが生まれるのは当然だろう」(齋藤氏) ただ一方で、2012年の反日暴動のように、さまざまなチャイナリスクが顕在化したり、中国経済自体もひところに比べると落ちてきており、中国の和僑を取り巻く環境は単純ではないようです。
アジアに台頭する「新中間層」
経済産業省の研究会でも、アジア諸国の「新中間層」獲得のため戦略を練っています。それによると、新中間層とは、新興国に誕生する製造業、サービス業などに従事する多くの新しい消費者層と位置づけられています。 リーマンショック後、なかなか完全復活を遂げられない先進国を尻目に、新興国経済は成長を続けています。2005年からの5年間で、アジアやアフリカの新興国の経済規模は10兆2797億ドルと2.2倍の増加となり、今後もこの発展は当面継続すると見込まれています。こうした新興国に出現する新中間層は、2030年までに23.6億人に拡大する見込みで、その位3か国は中国、インド、インドネシアとなっており、3か国で約8割を占めます。 ただ中国同様に新中間層が台頭するインドでのビジネスには難しさもあるようです。インドでは欧米へのあこがれ意識が強いからです。