「アジア和僑」は日本経済の発展につながるのか?
これからのASEAN
ASEAN諸国にも和僑は波及しています。タイにも新中間層狙いで起業家が進出しています。齋藤氏は「タイは親日国家で、日本人向けも現地向けビジネスも成り立つハイブリッド的な市場」といいます。またASEANで一番高齢化が進むのはタイなので、新中間層狙いだけではないビジネス展開もあり得えるようです。ほかにはシンガポールでも和僑会が立ち上がるなど、和僑の連携を強める動きが出ています。 こうしたASEANでの動きを齋藤氏は歓迎します。 「2年後にASEANの経済統合の動きもあるので、とてもいいタイミング。いわばEUのような自由貿易圏。中国を抜くいのは難しいが、いい経済圏になる」 今後の動きについては、ベトナムの動きが気になるといいます。 「ベトナム、カンボジア、ミャンマーなど含めて、サービス業などで先手を打っていかないといけない。韓国はそれに気づいてクールコリアンでしかけている」(齋藤氏) ただ韓国はどちらかという財閥中心の動き方。齋藤氏は、日本は「華僑モデル」を目指すべきだと訴えます。 「ポテンシャルが高い起業家がいるが、一方で国内では起業は難しい。安倍政権になって起業環境はだいぶ風向きは変わっているが、そういう人たちの受け皿は現段階ではどうしても海外になる」
新世代のアジア和僑
和僑の中にも新しい感覚を持った起業家たちが現れています。いわゆる「BOP(Bottom of Pyramid)」、低所得者向けのビジネス展開を中心とする企業家で、彼らは社会貢献的な意識を持ち、昔ODAがやっていたような課題設定をしてビジネスを考えています。 「アフリカなどでは多いと思うが、アジアでも今後そういう少しビジネス寄りの社会貢献できるグループが増えてくるのかなと。今までは和僑は飲食、アパレルという既存ビジネスのイメージがあったが『社会企業家』的な新しい世代が出てきて面白くなると思う」
アジア和僑のキーパーソン
アジア各地域に、また新しい世代へと広がりを見せるアジア和僑ですが、各地域での礎を築いた先駆者とたちがいます。ここではそんなアジア和僑のキーパーソンを紹介します。 ◎藤岡久士氏(上海和僑会会長) 中国和僑のさきがけ的存在。2000年にイートアンド株式会社の上海駐在として中国に渡り、 2003年から独立。現在、イートアンド、ドトール日レスHDとそれぞれJV(共同企業体)を設立し、8業態10店舗の飲食店と食品加工工場(ラボラトリー上海)を運営。ラボラトリー上海とは、日本食の現地化、普及を目指し、現地の食材を使って味を再現するサポートするレンタルセントラルキッチン。展開ブランドは、洋麺屋五右衛門、星乃珈琲店、大阪王将、スイーツマジックなど。 ◎迫(さこ)慶一郎氏(北京和僑会会長) 中国で都市計画のマスタープラン作成にも関わっている。SAKO建築設計工社を2004年に設立。建築設計とインテリアデザインのほか、都市計画マスタープランも手掛ける。北京と東京と福岡を拠点に、中国・日本・韓国・モンゴルなどで90を超えるプロジェクトを展開。 ◎上野圭司氏(タイ王国和僑会代表幹事) 日本的洋食店「MY PORCH restaurant」オーナー。3つのビジネスを展開し、「日本の洋食屋さん」をコンセプトにしたレストラン、タイでは珍しいという日本式カラオケボックス、タイでタイの古式マッサージ店を開いている。 「開拓者」である藤岡氏らは、自分たちが当初、異国でのビジネス展開で非常に苦労したという。そのため「できるだけ次のプレーヤーをサポートして、手かせ足かせがないようにしてあげたい」と考え、ラボラトリー上海などのような起業家を支える「インフラ」をいち早く整備したのだといいます。