花王と順天堂大の研究グループ、パーキンソン病特有のRNA発現量変化を特定 検査法開発の一助に
花王生物科学研究所、順天堂大学医学部神経学講座の斉木臣二客員教授(筑波大学神経内科学教授)、大学院医学研究科神経学の服部信孝教授らの研究グループは、パーキンソン病患者の皮脂中のRNA(リボ核酸)解析から、パーキンソン病だけに現れるRNA発現量の変化を特定した。 両者は、パーキンソン病が皮脂の増加を伴う脂漏性皮膚炎を高率に併発することに着目。花王が確立した、あぶらとりフィルムで採取した顔の皮脂からRNAを抽出して分析する皮脂RNAモニタリング技術を用い、皮脂RNAにパーキンソン病罹患の指標となりうる複数のRNAがあることを21年に発見した。 今回、研究グループは、健常者104人、パーキンソン病患者99人、さらに新たに多系統萎縮症患者29人、進行性核上性麻痺患者33人(男女同数)を加えた合計265人を対象として、皮脂RNA情報の比較を行った。 21年に研究グループは、パーキンソン病患者では、健常者に比べてミトコンドリア関連遺伝子を主体としたRNAの発現上昇が見られることを報告。 さらに今回、皮脂RNAにおいては、ミトコンドリア関連遺伝子の中でも、特にミトコンドリア複合体Ⅴに関係するRNAが発現上昇することを新たに発見した。 多系統萎縮症と進行性核上性麻痺の患者との比較でも、パーキンソン病患者にだけ、ミトコンドリア関連遺伝子のRNA発現量の上昇が見られた。このことから、ミトコンドリア関連遺伝子のRNA変化はパーキンソン病に特異的で、皮脂RNAから、これらの関連遺伝子を抽出して指標にすることで、パーキンソン病と類縁疾患を判別できる可能性が考えられる、としている。 この結果から、皮脂RNAを用いた検査が、非侵襲的かつ簡便なパーキンソン病診断の補助技術となることが期待される。