なぜモチベーションが続かないのか?研究でわかった、やる気を保つ「5つのテクニック」
3. 幅広い意思決定の枠組み
人をダメにする誘惑を察知するのは、そう簡単ではありません。というのも、たいていの誘惑は、節度を守って楽しみさえすれば、深刻な問題をもたらすことはないからです。 ビールを1杯飲んだだけでアルコール依存症になることはありません。 また、濡れたタオルをたった1度、バスルームの床に置きっ放しにしただけで、パートナーとの関係が終わりを迎えることはないでしょう。 問題が生じるのは、こうしたちょっとしたことが積み重なった時です。 実は、誘惑が忍び込んでいることに気付きやすくなる意思決定のやり方があります。単一場面ではなく、複数の場面に関わる意思決定を行なうのです。私たちはこうした決め方を、「幅広い意思決定の枠組み(broad decision frame)」と呼んでいます。 たとえば、今月ランチに食べるメニューをすべて前もって決めておくと、その日その日で食べるものを決めるよりも、健康的なメニューを選ぶ可能性が高くなるはずです。 30日分のランチの予定を一覧すれば、1日分のみを見るよりも流れがわかりやすいので、誘惑に負けそうになっている部分があれば、それに気づきやすくなります。 また、ホテルの宿泊料や誕生日のプレゼントなど、特別なもの、あるいはめったに買わないものについては、つい財布の紐を緩めてしまいがちです。 それは、こうしたものを買う時は、その一回しか検討しないことがほとんどだからです。ある研究では、こうした出費を、「特別な出費」という大きなカテゴリーの一部として考えるよう促しました。すると、浪費する確率が下がったのです。 別の研究で、私たちは企業の従業員に対し、仕事に関する問題行動を自分が行なう可能性はどのくらいあるか、尋ねました。 たとえば、有給を減らしたくないので仮病を使って病気休暇を取るとか、職場の備品を私用で使うといったことです。 この研究では、「仮病で病気休暇を取るのは1回だけだ」と考えた人は、仮病を使うつもりがある、と答える可能性も上がりました。つまり、「1回だけ」と考えると、自分の倫理観に背く決断をするハードルが下がるということです。