なぜ三木谷オーナーのヴィッセル神戸で監督交代が繰り返されるのか…三浦監督の電撃解任で11度目
ここでいう継続性は“こらえ性”とも置き換えられる。もっとも、三浦体制が維持された今シーズンに関しては、オフの補強も十分だったとは言い難い。 特に昨シーズン限りで退団および引退した、昨夏のヨーロッパ選手権にベルギー代表として出場したトーマス・フェルマーレン(36)が抜けた最終ラインは、浦和レッズを退団した元日本代表の槙野智章(34)を獲得しただけにとどまった。 昨夏に日本代表の大迫勇也(31)、元日本代表の武藤嘉紀(29)、元スペイン代表のボージャン・クルキッチ(31)のフォワードトリオを獲得した神戸は、選手層を厚くする補強よりも熟成を選んだ。1月の新体制発表会見。手薄になった感の強い最終ラインを含めて、さらなる補強が必要なのでは、と問われた栗原圭介強化部長はこう語っている。 「いまいる選手を大きく変える必要はない。市場はまだ動いているので調査はしていくと思うが、現状ではこのメンバーで戦っていくことになる」 追われるチームのひとつになった今シーズン。秋にカタールワールドカップが開催される関係で全体的に過密日程が組まれたなかで、ACLの集中開催時と重複するリーグ戦が前倒し開催された神戸は、開幕直後からさらにハードな戦いを強いられた。 必然的に選手たちにかかる負担が増え、武藤に続いて大迫が戦線離脱。一度は復帰した大迫は清水戦で再び怪我を負ったために、カタールワールドカップ・アジア最終予選の3月シリーズへ招集されていた日本代表を辞退せざるをえなくなった。 昨シーズンにブレークしたDF菊池流帆(25)も出遅れたなかで、リーグ戦における総得点「3」は最少タイ、総失点「9」は最多タイを数えている状況下で監督交代が決まった。三浦氏は清水戦後に、実はこんな言葉も残していた。 「選手それぞれの特徴を生かしたシステムを考えてはいたが、連戦のなかでトレーニングによってそれを構築する時間がまったくなかった、というのはある」 裏返せば中断期間を巻き返しへのきっかけにしたい、という青写真を描いていたとも受け取れる。しかし、公式ホームページからは三浦氏だけでなく、コーチングスタッフの名前もすべて削除されている。現時点で正式なアナウンスはないが、いっせいに退団するとなれば、三浦氏のもとで積み重ねてきたものがすべて無に帰してしまう。 大迫らが加入した昨夏に開催した記者会見で、三木谷会長はACL制覇を「ヴィッセル神戸の夢」と位置づけた上で、こんな野望を公言している。 「アジアでナンバーワンの実力を持ったクラブになるとともに、やはりサステナビリティーなチームを作っていきたい。いまのJリーグは何となくこぢんまりとまとまっている、と言うと怒られちゃうかもしれないけど、やるからには今後も積極的な投資を続けながら大きな魅力があって、コンテンツがあって、経済的にもサステナブルになっていく、という姿がヴィッセル神戸の目標なのかなと思っています」 またもや繰り返されたシーズン途中の監督交代が、果たしてサステナブル、すなわち持続可能な神戸の未来に寄与していくのか。チームの再始動が24日に迫るなかで、シーズン途中に再組閣を余儀なくされた指導体制の顔ぶれがまずは注目される。 (文責・藤江直人/スポーツライター)