【証言・北方領土】国後島・元島民 池田英造さん(4)
ロシアの現住民をおっぱらうようなことはできない
――話をしたり、要求できる最後の世代ですね。 うん。だから、報道関係者に言ったんだけど、「東大まで行かなくても、せめて高校ぐらい出てれば、一筆書いて残したいんだけどな」って。「だけど、俺、書けないけどさ、こうして聞いてくれて、皆さんが残してくれるでしょ。これ全くありがたいって、感謝してる」って言ってるんだけどね。ほんとにね、俺の思い、大勢の皆さん集まって、記録残してくれ、ありがたいなと思ってるよ。 ――2島といったん決めてしまうと、もうそれ以上はできなくるかもしれない。だから、簡単に妥協するのではなくて、きっちりまとめるまでは我慢しようと考えている。 ただ、4島の帰属を認めてもらってだよ、段階的に1島なり2島なりっていうのは、やっぱり考えなきゃなんない。っていうのは、今の島民いるわけでしょ。これだって、ふるさととしている島民もいますからね。ロシアに。だから、これらをね、追っ払うようなことはすべきでねえ。初めてビザなしに行ったとき、ホームステイやったときにね、そこのうちでね、話したのさ。「失礼だけど」「電気も整備できてない、水道もできてない、道路もできてない、日本から見たらね、ほんとに大変な生活してると思うよ」って。 それで、「気悪くするかしんないけども、北方領土を日本に返してね、日本の経済を導入して、もっと整備して、俺らと一緒に住まう気がないか」ったらね、「それができれば北方領土は返してもいい」っていう話出たのさ。「だけど、国がそうは認めないだろう」って、そういう心配してたよね。だから、そこでね、「国に任したらだめなんだ。我々がスクラム組んで、国に働きかけなきゃだめなんだ。そういうことをやれば可能だ」って話したらね、「そういうことができれば返してもいい」ってこと言って。こんなばかなこと言ったのも初めてだと思う。
島の価値観は「元島民が何人残っているか」
――島や漁業権の問題と、ロシアの現住民の話は別の問題ですか。 漁業権ってね、問題でないのさ。だって、返してもらえば、漁業権なんて、後で解決できるもん。返りもしないのに、漁業権どうのこうの言ったって、解決できないよ。今、特別許可で漁に行ってるものもあるよね。だけど、それだめだ、って向こう言ったら、終わりだからね。返ってこなきゃ、漁業権だって主張できないわけだから。だから、ほんとの島の価値観っていうのは、あと、元島民何人残ってるか、何十人残ってるかだな。元島民の中でもね、関心のない人たくさんいる。俺の言ったこと、青森の新聞とね、富山の新聞に出てるのさ。この人方も元島民なんだよね。だけど、この人方の記事と俺の記事読んだら、全然問題でない。「素直な言い方で」って。「俺は荒っぽいから、言うことが荒っぽいよな」っていうことだけどね。そしたら、どっかのメディアの人だなあ、これ「富山にも出たよ」って送ってくれたの。もう、返還運動にあんまり期待しない気持ち強くなってきたから。ただ、思いだけはね、残したいなと思ってたからね。