天井に穴が開き、被害総額は数千万円…銀座高級クラブ放火容疑で逮捕の元店員 社長が明かした「素性」
東京・銀座の高級会員制クラブから、オークションで1本200万円前後の値がつくヴィンテージ・ウイスキーなど少なくとも6本を盗んだうえ、更衣室に放火したとして、警視庁は17日、非現住建造物等放火等の疑いで、住所不定の元従業員、稲本恵司容疑者(38)を逮捕した。 「そ、そこイヤッ!」…自らの行為を無修正で投稿32歳女「戦慄の素顔」写真 ◆復旧にかかるのは6000万円以上 事件は今年3月中旬の未明、銀座8丁目のクラブ「Q(仮名)」で起きた。犯人は大仏のお面をつけ、自らの存在を隠すために黒っぽい傘を用意して侵入。かつて働いていた店なので酒倉やワインセラーの場所はもちろん、防犯装置を熟知しており、更衣室にある監視カメラのレンズにテープを張り酒類を盗み出し、証拠隠滅を図ろうと放火した疑いが持たれている。 火災は防火装置が作動し、ボヤで消し止められたが、その後の復旧作業に時間がかかっており、営業再開は夏ごろになると見られる。「Q」の社長はFRIDAYデジタルの取材にこう明かす。 「まだ煤(すす)の臭いが残っているのでそれも取らなくてはなりません。今、(店の)中を全部壊してスケルトンにして、全く新しい設計にして作り直してます。6000万円以上かかりそうです」 「Q」の社長は稲本容疑者についてこう明かす。 「(稲本容疑者は)おととしの年末にやめるまで、ウチでは8年ほど働いていました。変に小ずるいところはなくて、いいヤツはいいヤツだったんですけどね。周りのスタッフとはあまりうまくはいってなかったようで、我が道をいくようなところがありました。 (稲本容疑者が)入って2年ぐらいしたとき、高級酒を何本か盗んで転売したことがありました。『出来心でやってしまった』ということでしたから『じゃあ、戻ってこい。(盗んだボトルの)仕入れ値でいいから、給料から返すんだぞ』と言って許してあげたんです。それがこんなことになってしまって…『人ってわからないものだな』と思いますね」 関係者の話を総合すると、稲本容疑者はもともと金遣いが荒く、多額の借金を抱えていたという。今回の犯行は、借金の返済に充てるために、店の内状を知る「Q」から「響」「山崎」などの高級ボトルなど盗んだとみられる。 この放火事件の背景には、ジャパニーズ・ウイスキーの暴騰がある。‘00年代に入ると海外の評価が高まり、サントリーの「山崎」は’03年に世界的に権威のある酒類コンペティション「ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)」で金賞を受賞。本場のイギリスやスコットランドと肩を並べる銘柄として認められた。 特に「山崎25年」の販売本数は年間1200本と少なく、600本しかリリースされなかった年もあり、あっという間に品薄となり、’22年のオークションで定価の10倍にあたる175万円で落札された。円が一時1ドル160円まで下落した今、200万円でも買うと海外の愛好家から垂涎の的になっている。 さらに「山崎50年」は5400万円、「山崎55年」は8500万円というケタ違いの値がつき、同じくサントリーの「響35年」は有田焼、九谷焼の陶器や磁器のボトルが使われているため、装飾品としての価値もあり、香港のオークションで1000万円以上で売買された逸品もある。 都内でオーセンティックなバーを開業するオーナー・バーテンダーはこう嘆く。 「『山崎25年』は酒屋さんに置いていないし、オークションでしか買えません。封を切ったら劣化して値打ちが下がりますから、実際に口にした人は少ないのでは。嗜好品が投資目的になってしまいました」 さらに別のバー経営者は 「もう、雲の上の話でわれわれには手が出ません。ここまで高くなると偽物が出てくるのでは、と危惧しています。中味を替えてひと儲けしようする連中がいるといわれていて、ネットで空ボトルが売買されているほどですから」 と警戒を強める。 稲本容疑者の「改心」を期待して一度は高級酒を盗んだ行為を許した社長の”親心”を、結果的に「仇」で返したのは、決して許されることではない。
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