【証言・北方領土】国後島・元島民 池田英造さん(4)
領土問題は解決しておかないと、後々まで消えない
――最後に伝えたいことは。 世界のあちこちで戦争始まってるわけでしょ。あれは昔の領土絡んでるわけ。それと、人種問題。おまえが入ってきたとか、俺が出されたとかっていう問題があるわけでしょ。これを思うとき、やっぱり解決しておかなきゃ、後々、問題が消えないっちゅう俺の見方もある。だから、はっきりしたいんだっていう。特にロシアとはさ、くどいようだけど、乃木大将と高田屋嘉兵衛を思ったときにね、争ってはならない国だということで、大事にしてもらいたいなと思うね。話し合いってね、鉄砲の弾飛ばさなくてもできるよ。鉄砲の弾飛ばしたら話し合いできない。だから、自分の本当の心を知ってもらうこと、そういう交渉しなきゃ、まとまらないと思う。
島が返ったらできる仕事を考えている
――まだ現役の漁師ですか。 沖には行ってないよ。ただ、陸(おか)の仕事は手伝ってるけどね。ほんとは息子、邪魔なぐらいに見てると思うけども、やるとね、張りが出るのさ。それが楽しみだよね。それがいきがいみたいだから。よく「北方領土返ったら行くの」っていうから、「俺は行くよ」。何だったらね、息子がやったってだめなのさ。さっきから言う島の価値観知らない。やっぱりね、12歳までいた価値観っていうの知ってるでしょ。 ――若返るでしょうね、気持ちが。 若返ると思う。そして、返ったら、俺のできる仕事は何かってこと、今から考えてんのさ。こういう仕事やったら絶対いいなって、皆にも喜ばれる仕事だなっていうのも心に秘めてるけどね、これまだ言えねえ、人に。 ――ホームステイしたのは国後ですか。 うん。ロシアの人にね、こっぴどくやられんでねえかなと思ってたんだけど、、大歓迎してくれたから、よかったなと思ってね。ホームステイでね、若夫婦と4歳の女の子がいるはず、そういう家庭なのさ。して、行ったら、奥さんと女の子がいない。そして、いかめしい男が1人来てね、男2人なのさ、そこの主人と。初めてホームステイやるわけでしょ。日本人野蛮だって、警戒したなと思ったのさ。「奥さんとマレンケ、どこ、どうしたの」って。で、「いや、近くに家内の妹がいるんで、そこへ用事足しに行ってんです」って。一晩いたけど、帰ってこなかった。警戒されるの当たり前だと思った。泊めてもらっただけありがたいなと思って。 その後に、自民党の細田さんっていう人が北方担当大臣なったときに、国後行って、俺言ったようなこと言ってるんだよね。日本の経済で開発して、一緒に住まないかっていうこと。俺、あの新聞記事持ってんだけども。だから、大臣、俺のどっからか聞いてんでしょうって、と思った。やっぱり、ああいう話をしないと、大臣が行ってしないと、俺が行って話したって話なんねえ。 ――日ロ首脳会談で何か兆しが見えますか。 見えないな。見えないっていうのは、俺ら元島民の目から見て、期待薄。だけど、日本全体から見たらね、北方領土関係ないのさ。経済交流優先して決まってけばいいのさ。そのほうが大きいだけにさ、北方領土って、かすむような感じ。だから、安倍さんがこのちっぽけな北方領土をいかに堅持できるかっていうことだな。これ堅持できねば、安倍さんも大したことないね。 ※「証言」の中には、現在では適切ではないとされる表現が含まれている場合がありますが、修正などはせずにそのままにしてあります。