80代以上の2人に1人が<慢性腎臓病>?2005年から15年にかけて患者数は150万人も増加…その理由とは。専門医「生活習慣病、心血管疾患と関連が」
◆生活習慣病と腎臓 第二に、高血圧や糖尿病といった生活習慣病との密接な関連性です。高血圧や糖尿病があると、腎臓もいっしょに悪くなるのです。 高血圧や高血糖は、腎臓でろ過を行っている糸球体の毛細血管を痛めつけ、腎機能の低下を引き起こすからです。 一方、腎機能が低下すると、それに応ずるように、高血圧や糖尿病も悪化します。このように互いの足を引っ張り合う悪循環が起こります。 糖尿病が悪化した結果、その合併症として生じる糖尿病腎症は、20年以上にわたって、人工透析に至る原因の第1位を占めています。 慢性腎臓病と診断され、腎機能が低下していることがわかったら、その原因疾患とされる糖尿病や高血圧のコントロールをしっかり行うことが必要です。 また、予防のうえでは、まだ腎機能に問題は生じていないものの、血圧や血糖値が高めの人は、腎機能が悪化しないうちに、運動や食事などのセルフケアなどで症状をできるだけ改善させておくことが大事です。
◆心血管疾患との関連 第三が、心血管疾患との密接な関連性です。 腎機能が低下すると、心血管疾患が起こりやすくなります。「心腎連関」と言って、腎臓の状態が心機能にも大きく影響を与えるのです。 アメリカの研究では、慢性腎臓病の患者さんが心血管疾患を発症する確率は、健康な人に比べて3.4倍にもなるとされています。 腎臓の機能が低下し、糖尿病や高血圧を併発するようになると、体内に活性酸素が増えます。 活性酸素は、増え過ぎると動脈を傷つけ、動脈硬化を進行させるだけではなく、心臓にも大きな負担となります。心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患も起こりやすくなるのです。 実際に慢性腎臓病になると、人工透析に至る前に、心血管疾患で亡くなる人のほうが実は多いということもわかっています。 言い換えれば、腎機能は私たちの寿命に深く関わっているのです。 腎機能が急激に落ちることにより、私たちの寿命はつきます。 高血圧や糖尿病を併発していれば、腎機能の低下とともに、それらの病気も悪化していきますし、心血管疾患のリスクも高まるのです。 こうして健康寿命が大きく損なわれることになります。 ※本稿は、『腎臓の名医が教える 腎機能 自力で強まる体操と食事』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
上月正博
【関連記事】
- 1日ベッドで安静にしているだけでヒトは<2歳老化>する?腎臓リハビリ専門医「長年推奨されてきた<慢性腎臓病=安静第一>という考えは今や…」
- 不治の病とされた「慢性腎臓病」が近年<治せる病>に?専門医「かつての常識では、腎臓病になった後に体を動かすのはもってのほかだったが…」
- 小倉智昭「コレクション用の部屋を畳み、荷物を入れた自宅から妻と義母が出て行き…。一人暮らしで妻との仲がより親密に」【2024年上半期BEST】
- 慢性疲労の裏に隠れているかもしれない<腎臓の劣化>。糖尿病専門医「腎臓が文句を言いだしたときには回復不可能なことも」
- 「ちょっと高めの血圧」がもたらす悪影響とは?糖尿病専門医「慢性腎臓病の発症リスクは1.28倍。腎臓や体もボロボロに…」