トランプ大統領返り咲き後の暗号資産規制
共和党は暗号資産に好意的?
もっとも、このことから直ちに共和党は暗号資産業界に好意的でSECによる暗号資産規制には消極的であり、民主党は規制に積極的だと決め付けるのは単純に過ぎる。そもそもSECのエンフォースメントによる暗号資産規制につながったハウイ基準の暗号資産への適用という規制手法を始動させたのは、2017年5月に当時のトランプ大統領による指名を受けて就任した共和党のジェイ・クレイトン前委員長である。 同氏は、2020年の大統領選挙で民主党のバイデン候補が当選したことを受けて辞任したが、退任直前の同年12月には、リップル社の暗号資産XRPが無登録の証券だとする訴訟の提起を主導し、リップル社のCEOが「SECは暗号資産業界に対する全面的攻撃を仕掛けた」と当局の姿勢を強く非難するなど、暗号資産業界の激しい反発を招いたのである(注3)。
態度を一変させたトランプ氏
今回の大統領選挙で返り咲くこととなったトランプ氏も、もともとは暗号資産そのものに対して懐疑的な姿勢を示していた。大統領在任中の2019年には「自分はビットコインやその他の暗号通貨のファンではない。貨幣ではないし、価値は非常に変動が激しく、薄い空気のような根拠しかない。規制を受けない暗号資産は、麻薬の密輸やその他の違法な活動などの犯罪を助けるだけだ。」と主張していたほどである(注4)。 ところが、そのトランプ氏が豹変した。ビットコインなどの暗号資産による選挙資金寄附を受け入れ、暗号資産業界に好意的な態度を明確にしたのである。2024年7月の共和党全国大会で採択された選挙公約には、「民主党の違法で非アメリカ的な暗号資産抑圧(crackdown)を終わらせる。」とか「ビットコインのマイニングを行う権利を擁護する」といった文言が盛り込まれた(注5)。この大会で副大統領候補に指名されたJ.D. ヴァンス上院議員は、多額のビットコインを保有する著名な暗号資産支持者として知られている。