弁護士まで加担して「法律の抜け穴」を研究し尽くす”地面師”集団…なかなか根絶やしにできない「闇の住人」たちの実態に迫る
Netflixドラマで話題に火が点き、もはや国民的関心事となっている「地面師」。あの人気番組「金スマ(金曜日のスマイルたちへ)」や「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映され、講談社文庫『地面師』の著者である森功氏がゲスト出演した。同書はすべて事実を書いたノンフィクションであり、ネトフリドラマの主要な参考文献となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションであるドラマよりも、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むほうが参考になるだろう。 地面師たちはどうやって不動産を騙し取るのか。森功著『地面師』より、抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第73回 『地面師御用達の「偽造専門の印刷屋」は東京・神田にあった…地面師グループの犯行を陰で支える“道具屋”とは』より続く
突然止まった返済
逗子が手口の詳細を明かした。 「あくまで借金ですから、計画ではそれを返し、何ごともなかったかのように土地の所有権を元に戻すはずでした。彼らが言うには、3ヵ月後に別の仕事で金が入るので、利子をつけて企業に返済するという計画だった。そうでなければ、父親が気づいた時点で、刑事事件化してしまう。そう聞かされていたので、自分も安心していたのです」 数千万円を融通してくれた会社は地面師グループ側が探してきたところだったというから、何らかのつながりがあったのかもしれない。実際、地面師たちは3ヵ月後、資金を融通した相手の企業に1000万円ほど返済したという。だが、その後の返済はなかった。 「取引は、土地に抵当権を設定するのではなく、買い戻し条件付きの融資で、資金を出した会社にいったん名義を移すという形をとっていました。カネを出したのは中堅のマンションデベロッパーで、返済後、土地の所有をもとの父親名義に戻すというやり方です。その借金返済が滞ってしまったのだから、名義は父親からデベロッパーに変わったまま。おまけにその後、所有権がそのデベロッパーからさらに別の会社に移ったりしていた。今になって振り返ると、いかにも危うかった」 逗子がそう分析する。当初の計画では、3ヵ月間で八重森たち地面師グループが返済することになっていたので、所有権はもとに戻り、両親も気づかないはずだった。3ヵ月というのは、印鑑証明や戸籍などの書類の有効期限に合わせたものだ。ところが、4ヵ月が経っても残りの返済はない。登記簿上、土地は単にマンションデベロッパーに売り払われ、そこから転売されたのと同じだ。となれば、金を融通してくれたマンションデベロッパーが被害者だ。そうしてことが発覚した。 「実は、この件に一枚噛もうとした女の地面師が別にいて、取り分がもらえなかったんです。それを逆恨みし、自分の父親のところに『あなたの土地が勝手に売られていますよ』と電話をかけてきたんです。それで、驚いた両親が確認すると、本当に土地の所有名義が変わっているではないですか。それで警察沙汰になったわけです」