「インボイス事業者」にならないと損する職種があるってホント?いまさら聞けないインボイス制度の超基本
■仕入れのための買い物は「消費」とみなさない 郷:それって要は……仕入れのための買い物は「消費」とみなさない、ということですか? 小山:そういうことです。請求書やレシートや領収書には「消費税」と書いてあっても、会計的に処理するときは「課税仕入れ」という特別な扱いになるんです。 で、インボイス制度がはじまる前は、郷さんが課税事業者か免税事業者かにかかわらず、出版社は私から預かった30円のうち郷さんに支払った10円を仕入税として控除できたんです。でも、インボイス制度が導入されたことで、仕入れ先からの「適格請求書」がないと控除ができないルールに変わったんですね。
郷:つまり? 小山:郷さんが免税事業者のままだと、出版社は郷さんに10円を支払っているにもかかわらず、私から預かった30円をそのまま納税しないといけません。 実際には、出版社は仕入れ先がほかにもいっぱいあるので、30円をまるまる納税することはありません。でも、少なくとも郷さんに支払う10円を控除に使うことができなくなる。これが「クライアントが損をする」の意味です。 郷:そういうことだったんですか。
■制度導入から6年間は経過措置がある 小山:ただし、この話には裏があります。「免税事業者に支払う消費税は控除できません」といきなり言われても事業者が困るので、制度が導入された2023年10月から6年間、経過措置が取られています。 (1)免税事業者に支払った消費税の一部を控除できる 2023年10月~ 2026年9月まで:税額の80% 2026年10月~ 2029年9月まで:税額の50% (2)1万円未満の少額取引の消費税は控除できる(※)
2029年9月までの特例 ※基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5000万円以下の事業者のみ 小山:少額取引はいいとして、ぜひ知っておきたいのは、いま現在(2024年)適用されている80%控除です。 郷:80%? 小山:いま現在、出版社は「適格請求書」がなくても郷さんに支払った消費税10円のうち、80%にあたる8円は控除できているんです。 郷:控除しとるんかい! じゃあ、出版社としてはあまり痛くないと。