「FCV」中国対抗軸に…トヨタ・BMW協業拡大、今後の焦点は?
心臓部供給、日本“デバイス売り”
トヨタ、BMWの提携をはじめ、FCVをめぐる動きで今後の焦点になるのは各国の政策だ。欧州連合(EU)では再生可能エネルギー電力由来の水素(グリーン水素)活用による産業界の脱炭素化を促進すべく、グリーン水素の域内生産の30年目標として年間1000万トンを掲げている。ドイツ自動車工業会(VDA)もEV普及だけではなく合成燃料や水素燃料の重要性を指摘している。水素燃料のインフラ整備から日欧勢で連携し、標準化をリードする必要がありそうだ。この点、川崎重工業がダイムラートラックと欧州での液化水素ステーション輸送網の構築についての検討を始めるなど、新たな動きも出始めた。 日本の自動車メーカーにとってはFCシステムや水素タンクなど心臓部を供給する“デバイス売り”という、付加価値の高いビジネスモデルを構築するチャンスでもある。FCVについてはホンダが米ゼネラル・モーターズ(GM)とFCシステムを共同開発し、米ミシガン州にある両社の米合弁拠点で生産。新型FCV「CR―V e:FCEV」を米オハイオ州にある工場で生産を始め、米国と日本で販売を始めた。ホンダはいすゞ自動車ともFCVで連携しており、将来は日産自動車との協業の可能性もありそうだ。 いずれにせよ課題はコストだ。トヨタのFCV「MIRAI(ミライ)」も補助金があっても500万円を超す。足元の販売台数では量産効果を発揮できる水準には遠い。 FCVの勢力図に影響を及ぼす存在として注目されるのが韓国・現代自動車。24年1月に米ラスベガスで開催された家電・IT見本市「CES」でFCVを大々的に披露し、世界の関心を集めた。18年に量産FCVを発売し、20年にはFC大型トラックも投入している。25年に新型FCVを発売する計画も打ち出している。現代自にとってもコストの問題は無視できず、新たな合従連衡の目玉になる公算がある。