「グラスワイン1杯2000円」「おつまみも2000円超え」…渋谷・おしゃれ飲食街の「インフレ」が進む“裏事情”
あらゆるトレンドやカルチャーの発信地となる街、渋谷。酒場に関しても、多くのトレンドが渋谷から発信されている。感度の高いイケてるZ世代は、新宿でも池袋でもなく、渋谷で飲んでいる。 【画像】渋谷から徒歩圏内、おしゃれな若者がこぞって通う飲食店のあるエリア 渋谷で若者が集まる繁華街といえば「センター街」のイメージがあるが、食の感度が高い若者たちが集まるのはセンター街のようなゴチャゴチャした場所よりも、メインストリームから少し離れた隠れ家ロケーションにある店だ。 例えば、代々木八幡方面に向かうオーチャードロード沿いのいわゆる奥渋、井の頭線で1駅、渋谷中心部から徒歩圏内でもある神泉エリア、井の頭線の渋谷駅直結のビル、渋谷マークシティと国道246に挟まれた道玄坂1丁目エリアのマークシティ裏、代官山に近い閑静な住宅街の桜丘など。
これらのエリアには20代30代が夜な夜な集まる話題店が点在しており、噂を聞きつけ全国の飲食店経営者も視察に来るほどだ。 ■渋谷のおしゃれ飲食店のインフレがすごいことに そんな渋谷の最先端なトレンド酒場では、今インフレがすごい。グラスワインが普通に1200円、1500円する店も珍しくない。2000円を超えるものも見たことがある。ボトルではなく、グラス1杯だ。 生ビールは700円超えも普通にある。おつまみも手の込んだ料理なら1皿1000円、2000円を軽く超える場合も多い。
例えばテーブルクロスが敷かれたレストランでソムリエが恭しく注ぐワインがそれくらいの値段でも何ら違和感はないが、そうではない。店内は流行を取り入れたオシャレな空間で、流行りの音楽がクラブさながら流れていたり、カジュアルなカウンター席や立ち飲みだったりで、若くてオシャレなスタッフがフレンドリーな接客でラフに提供される。 そうしたカジュアルな雰囲気はいかにも20代30代に好まれそうだが、価格はカジュアルではない。そんな店が若者から人気を集めている。
決して「ワイン1杯1200円は高い」と非難したいわけではない。筆者は個人的に適正価格に基づいた飲食店の値上げは賛成派だし、相応の品質のワインを提供しているはずと思っている。ラフな立ち飲みで1200円に相当するワインを提供すること、すなわち提供される環境と提供される商品価格のイメージの乖離に驚いているのである。 「内的参照価格」という言葉がある。商品には多くの人が「これくらいだろう」とイメージする価格があるということで(例えば、狭い店内でサクッとたいらげる牛丼なら1杯400円くらいが相場だろう、といったイメージのこと)、この場合は内的参照価格から大きく外れている。