「グラスワイン1杯2000円」「おつまみも2000円超え」…渋谷・おしゃれ飲食街の「インフレ」が進む“裏事情”
にもかかわらず、それらの店を「コスパがいい」と評する口コミすら見たことがある。思わず「コスパとは?」と首を傾げたくなる。 渋谷で飲む若者は一体何に価値を感じてその値段を受け入れているのか? 外食は小売りと違い、商品そのものだけでなく接客や空間、雰囲気などの「体験」込みで値段を払ってもらうビジネスモデルだ。商品そのものの価値以上に、そうした店は魅力的な外食体験をお客は感じているということなのだろう。
■SNSの功罪も値上げの要因 値段が上がっているのには、店側の都合もある。物価や人件費の高騰ももちろんあるが、SNSの影響も大きい。 近年はよくも悪くもSNSが集客に影響を及ぼしている。インフルエンサーに取り上げられるなど何かの拍子でバズり、普段は来ないような若い人が詰めかけることがある。 そうした層は写真を撮るための最低限の商品しか注文せず、客単価が上がらない。すると店が想定している売上が取れず、客数は増えるのに売上は下がるという現象が起きてしまう。客数が増えることで現場は疲弊し、もともと来ていた本来の客単価を支払うお客は、突然若い人で騒がしくなった店に嫌気がして離れていく。これに悩まされる店は多く、渋谷という立地は特にその現象が起こりやすい。
そこで店は価格設定を高めにすることで客単価対策を行っている。特に、SNSを見てきたお客が絶対に頼みたい名物や写真映えするメニューの値段を上げることで、注文数が少なくても一定の単価を確保できる。それを支払えない層を排除することで店の治安が保たれ、こうして「カジュアルだけどいい値段のする店」が完成する。 ここで筆者が思い出すのは、2016年にアマゾンプライムビデオで配信されたドラマ「東京女子図鑑」だ。
水川あさみ演じる主人公・綾が、23歳で上京してから40歳になるまでを描いた本作の中には、高級フランス料理店の代表格、ミシュラン三ツ星の「ジョエル・ロブション」について、「30歳までにデートで行けたらいい女」と形容するシーンがある。綾のこの言葉に「そんなの、初めて聞いたよ!?」と思う人も少なくなさそうだが、とは言え、高級レストランを訪れることがステータスとされていた時代があったのも間違いない。 そう考えると、今の若者は、高級レストランにはもう興味がないのかもしれない。