資金調達で「コミュニティ」をつくる 株式投資型クラファンで広げる可能性とは
スタートアップ資金総量増で、チャレンジ総量も増やす
波多江(続き):また、日本のスタートアップの資金総量を増やしていきたいと考えています。いま年間約1兆円弱がVCや事業会社からの資金総量と言われていますが、個人の金融資産は2200兆円ともされています。こうした資金がスタートアップに流れて行けば、チャレンジ総量も増えていくと考えます。日本のイノベーションを促進したり、社会課題を解決したりするような企業を応援する経済活動を広げ、大きな流れをつくっていきたいです。 ──最後に、株式投資型クラファンに興味をもつ読者に向けてメッセージをお願いします。 波多江:イークラウドで投資する方の多くが30代から50代のビジネスマンで、うち約2割が会社の経営者で、世の中の新しい動きに敏感な方々が多くいらっしゃいます。そういった方々がエンジェル投資家として自分にできるサイズでイノベーションに関わったり、実際にスタートアップとの関わりから本業でコラボレーションが生まれたりしています。 また、沖縄から北海道まで幅広い地域の企業による活用事例があり、その応援してくれる仲間が全国各地にできています。「おらが町ベンチャー」といったように地元や関わりのある地域のスタートアップを応援したい・育てていきたいというニーズもあり、株式投資型クラファンを通じて地域経済の活性化にも繋がると考えています。 佐別当:地方のプレイヤーに資金が集まる流れは、僕も実感しています。最近は、上場目的ではない地方創生ファンドが誕生したりもしています。ある特定の地域で事業展開をしていく上では、10億・100億円規模のビジネスを生み出すのは難しいことです。でも、その1つの会社が生み出すインパクトが、地域を変える可能性は十分にあります。 僕たちADDressも、売り上げや利益面ではまだ大したことがなくても、観光地ではない場所であっても、空き家活用や関係人口の創出といった地域課題に対しては結果を出していますし、インパクトを起こせていると感じています。そういった数字では測れない面に「共感」をいただいています。 ビジネスを作る上では、もちろんスケールや収益性といった話が出てきますが、やはり「どんな社会にしたいのか」「地域やサービスをどうしていきたいのか」といった点にちゃんと向き合うことで、それを応援したいっていう仲間たちが集まってきます。そんな共感を集められるぐらいの社会性は、これから「コミュニティラウンド」という新しい資金調達にとって重要になってくると思います。そうしたソーシャルベンチャーやローカルベンチャーが、株式投資型クラファンをより活用してくれると、僕も心強いですし、やっててよかったなと思いますね。 波多江直彦◎2006年慶應義塾大学法学部卒業後、サイバーエージェントに入社。広告代理部門、スマホメディア、オークション事業立ち上げ、子会社役員等を経て、サイバーエージェント・ベンチャーズで投資事業に従事。その後XTech Venturesにてパートナーとして投資実行を担当。ベンチャー投資の世界をプロだけでなく個人投資家にも開かれたものにすべく、18年7月にイークラウド株式会社を創業。 佐別当隆志◎2000年ガイアックスに入社し、新規事業開発に携わる。16年、シェアリングエコノミー協会を設立し、事務局長に就任。17年内閣官房「シェアリングエコノミー伝道師」に任命。18年定額の多拠点生活プラットフォーム「ADDress」を展開する株式会社アドレスを設立。23年シェアリングエコノミー協会理事に就任。
督 あかり