資金調達で「コミュニティ」をつくる 株式投資型クラファンで広げる可能性とは
国内最高額を短期間で達成できた理由とは?
佐別当:そんな時流の変化のなか、僕自身は海外で先進事例がある「コミュニティラウンド」の考え方に惹かれました。VCや企業から調達できるにもかかわらず、上場前に自分たちのファンやユーザーに株式をシェアした状態で次のステージに上がっていくことがかっこいいという価値観に衝撃を受けたんです。 僕らはずっとユーザーである会員さんだけじゃなくて、その地域の方々、特にオーナーさんや家守さん(ADDressにおいて地域と会員を繋ぐ役割)などいろんなステークホルダーに関わってもらっています。彼らは金銭的なメリットよりも「地域を良くしたい」「いろんな人に来てもらいたい」という思いが強く、僕らからすればスタッフに近いような印象で捉えてたんですよ。なので「コミュニティラウンド」を日本で初めて実施して、約1億円というそんなに少なくない金額を集めることができれば、次に続くコミュニティを大事にしてる企業にとっての選択肢の1つになるんじゃないかなと思って。 そんなタイミングで東京都や政府が株式投資型クラファンへの支援をしていくお話もあり、23年は「株式投資型クラファン元年」だったと思います。 また波多江さんやイークラウドのチームの熱量が高く、一緒にやりましょうとなりました。 ──なぜADDressの第一弾の株式投資型クラファンでは国内最高額(当時)の9930万円を短期間で達成できたのでしょうか。 波多江:ADDressの場合、既存のユーザーなどステークホルダーの方々に対しても投資機会として告知いただき、コミュニティラウンドに乗り込んだという点が大きいのかなと思っています。本当に多くの方にご反応いただき、なかには「投資したかったけど間に合わなかった」といったお声もあるほどでした。既存のユーザーの方々にもしっかりとサービスが理解されてたし、もっとこの動きが広がってほしいという思う人たちもいたし、そこに対して投資で関わっていきたいという方々が潜在的にいらっしゃったということだと思います。 佐別当:ADDressには会員や家守さんだけではなく、メール会員が 20万人近くいるんです。サービスを使ってないけれど関心がある潜在層で、ADDressを使う機会はまだないし、オーナーとして物件提供する家もないけれども応援してるという人たちが万単位でいるので、実はそういう人たちが株主として10万円、20万円出すよという形で関わってくれたのが1番大きいんじゃないかなと思っています。 また20万円以上の出資であれば、ADDress物件に宿泊ができるチケットもあり、そこで初めて利用する方もいらっしゃいました。 あれから経営者仲間から株式投資型クラファンについて相談されることもありますが、こう答えています。1億円という金額も少なくはないのですが、それ以上に500人もの方々が株主になり、サービスを一緒に作っていく仲間が増えたと考えています。少額の株主ではありますが、そうしたコミュニティの力を実感できるのが良さだと思います。 先日、個人投資家も含めた株主総会を開いた際は、オンライン上でしたが、個人の株主の方からも発言してもらい、応援メッセージをいただいたりしました。また今後は、ADDressの物件のある三島ツアーを個人株主向けに行ったりします。