資金調達で「コミュニティ」をつくる 株式投資型クラファンで広げる可能性とは
海外のコミュニティーラウンドの状況
──コミュニティーラウンドとして成功している海外の事例をぜひ教えてください。 波多江:例えば、英国のユニコーン企業で、クラフトビールメーカー「BrewDog(ブリュードッグ)」という会社は、非上場ですが、株式投資型クラウドファンディングを通じて、株主20万人以上になっています。ブリュードッグ好きな人が株主に多く、応援団を集めてビジネスを広げてきました。「クラフトビールを飲めば飲むほど、株価が上がるかもしれない」といった期待感を、ブランドのアンバーサダーとなって広げていき、資金調達に加えて、新しいマーケティング手法とも言えます。 佐別当:まさにブリュードッグがすごくかっこいいなと思いました。株主の数が数千人レベルではなく、数十万人というのがすごいですよね。ブリュードッグ=クラフトビールのカルチャーを作った会社で、マーケティングのあり方も、会社組織の運営の仕方も、メッセージの発信方法も、あらゆる面で道を切り開いてきた会社だと思ってるので、僕らも多拠点コミュニティを通じて、まだ誰もやってない世界を作りにいきたいと思っています。 ──今回、ADDressで第二弾の調達を展開する理由と、「ミドルステージからの上場」のステップをどう描いていますか。 佐別当:今回は特に資金調達の手段としても株主の皆さんの力を借りたいなと思っています。株式市場はやはり厳しい状態で、上場しても時価総額が100億円つけばいいような基調になってるので、VCや企業に頼るのではなく、今こそ個人の力を借りたいなっていうところもあって。 まずはコミュニティラウンドを成功させ、そこで実績を作って、 VCや企業からの調達を実施する流れにつなげたいと考えています。 波多江:コミュニティラウンドでは、コミュニティの関係性を深めて広げていくためにワンショットで終わるものではなく、育み続けるものと思ってます。なので、中長期的な目標に向かって、毎年のように株式投資型クラファンでの調達を実施する企業を増やしたいと思います。 佐別当:僕たちの目標は2020年代、5年以内には上場したいと思って頑張ってはいますが「 これだけコミュニティの高い熱量で応援されてる会社だ」と認識され、ここは上場させなきゃと思ってもらえるぐらいの会社に成長したタイミングで上場できるといいなと考えています。 また僕たちに出資をするVCにはインパクト投資家の方々も多く、個人も含めて社会的意義を考えた「いい株主」が集まってきてくれていると実感しています。だからこそミドルステージから先にもう一段、マーケティング面でも新しいチャレンジができたらと思っています。また、コミュニティ強化のため、サービス会員内のオンライン上の出会いも促進するような取り組みも始めようとしています。 ──非上場スタートアップに個人投資できる「株式投資型クラファン」の調達額上限引き上げ後は、どんな活用法が広がると見ていますか。 波多江:「コミュニティラウンド」が増えると見込んでいます。既存会員がいらっしゃるミドルステージ以降のスタートアップにとっては、調達額が1億円程度だとちょっと少ないけど、数億円だったらありがたいし、上場に向けて個人投資家も株主に巻き込むことで上場後のコミュニケーションの訓練にもなるということで検討を進めている経営者の方もいらっしゃいます。個人投資家にとっても、これから事業がまだまだ伸びていくようなタイミングで、株を持って応援することができるので、面白く、貴重な体験が提供できると思います。