海保の無人偵察機に「吊り下げる謎のハコ」公開 武器?燃料タンク? 市民生活に直結する「意外な使いかた」とは
海保自身の活動にも重要な「携帯電話の電波」を補完
アメリカの総合防衛企業ジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)が、2024年10月16日から19日にかけて東京ビッグサイトで開催された「国際航空宇宙展2024」に、無人航空機MQ-9Bに搭載する、「携帯電話の臨時基地局ポッド」を出展しました。 【ミサイルか何か…?】これが海保の無人機に吊り下げる「ナゾの箱」です(写真) このポッドはMQ-9Bの翼の下への搭載を想定しており、文字通り、この無人機を携帯電話の「空飛ぶ臨時基地局」として運用するための装置です。GA-ASIとソフトバンクが共同で研究開発を進めているもので、なかにはソフトバンクとY!モバイルの電波中継に使える器材が収納されていました。 MQ-Bそのものは、イギリスやオーストラリア、インドなどに採用されている無人航空機で、日本では2024年11月の時点で海上保安庁が洋上監視型を「シーガーディアン」として3機運用しています。 シーガーディアンの主任務は30時間以上という長い航続時間と、搭載する高度なセンサーを活かした洋上哨戒(偵察)です。2024年1月1日に能登半島地震が発生した際にも、たまたま洋上哨戒任務で飛行していたと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は聞き及んでいます。 このときシーガーディアンがどのような活動をしたのかまではわかりませんが、搭載するセンサーで収集した画像情報が対策本部へと送られ、海上保安庁や自衛隊などの航空機が収集した情報と共に、救助活動や復旧活動に活用されたものと思われます。 自衛隊やその他の官公庁も多数の無人航空機を導入しており、日本の持つ上空からの画像情報の収集能力は、過去の大規模災害発生時に比べて大きく向上したものと思われます。ただ、画像情報をさらに活用して、迅速な救援や復旧活動を可能とするためには、地上で活動する部隊とのメインの連絡手段となる携帯電話をいかに速く復旧できるかが、一つのカギとなります。
「成層圏の基地局」はどうなった?
携帯大手のソフトバンクは現在、大規模災害の発生時に地上の携帯電話基地局が損害を受けた際には、中継装置を搭載した気球を使用する「係留無線中継システム」にて、ソフトバンクとY!モバイルの通話やデータ通信を可能にしています。 この係留無線中継システムは4~5人の要員で設置できますが、天候の影響を受けやすいという問題もあります。 このためソフトバンクは、貨物搭載量こそ有人航空機に比べれば小さいものの、数十日から数か月程度飛行できる高高度滞空型無人航空機(HALE:High Attitude Long Endurance)に電波中継機材を搭載して大災害発生時の臨時携帯電話基地局とすることを志向しています。 同社はHALEを活用した成層圏通信プラットフォーム(HAPS)を確立すべく、2017年12月に新会社のHAPSモバイル(現在は親会社のソフトバンクに吸収合併)を、アメリカの無人航空機メーカーのエアロヴェイロンメントと合弁で設立し、エアロヴェイロンメントの開発したHAPSに電波中継機材を搭載してテストも行っています。 HALEは前に述べた気球などに比べて気象の影響を受けにくく、これまでの人力に依存した作業に比べて早期に携帯電話を復旧することもできます。同様の構想はソフトバンク以外の携帯電話会社も持っているようなので、将来的にはHALEを大規模災害発生時の臨時基地局とするのは有望だと筆者は思います。 しかしHALEを臨時携帯電話基地局とするには、技術面などでクリアしなければならない点が多いのも事実。そこで実績のあるMQ-9Bに、携帯電話の臨時基地局ポッドを搭載するという発想が浮上してきたというわけです。