スランプを乗り越えたステフィン・カリー、『金メダル級』の勝負強さ「自信を持って今この瞬間に集中する」
指揮官スティーブ・カー「決めなければ満足しない男」
「シュートを打つ瞬間には、いつだって必ず決まるものだと考えている」と、アメリカ代表のステフィン・カリーは語った。 パリオリンピックの決勝、第4クォーター残り3分。フランスに3点差まで追い上げられてからが、カリーの真骨頂だった。3本の3ポイントシュートをカリーが立て続けに決めることで、ナンド・デ・コロやニコラス・バトゥーム、ビクター・ウェンバニャマが得点を重ねても点差は開いていくばかり。 残り35秒に2人のディフェンスの前から3ポイントシュートをねじ込んで96-87。続くポゼッションでデビン・ブッカーのダンクが決まると、カリーは『ナイト・ナイト』のポーズを見せ、レブロン・ジェームズも同じポーズをした。アメリカ代表のオリンピック5連覇の瞬間だった。 大会序盤、カリーはシュートスランプに陥っていた。世界最高の3ポイントシュートの名手でも、決まらない時はある。彼が素晴らしいのは、自信を失わないことだ。「自信を持って今この瞬間に集中する。動揺せず、自分が打つべきだと思うシュートを打つ。そうやって自分を信頼してあげればいい」 アメリカ代表のヘッドコーチを務めるスティーブ・カーは、ウォリアーズの指揮官としてカリーのNBAキャリアに並走しており、その信頼は何があっても揺るがない。トレーニングキャンプ開始からこの日に至るまで、カーはカリーの様子をつぶさに見てきた。 指揮官は『ESPN』の取材にこう語る。「ステフはシュートを決めるために何が必要なのかを考え、努力を続けてきた。私は彼に『1日ぐらい休んでほしい』と思っていたぐらいだ。だが、彼はチームの成功を喜びながらも自分のパフォーマンスには満足していなかった。どんなシュートでさえ決めなければ満足しない男なんだよ。そして、チームが厳しい状況に追い込まれたラスト2試合で、彼がすべてを懸けたシュートが決まるようになったんだ」 そう、これがカーの知るステフィン・カリーの姿だ。「ただ活躍するだけじゃない。プレッシャーの掛かる状況で最高のシュートを決めるんだ」 1992年のバルセロナオリンピック、マイケル・ジョーダンを中心とするアメリカ代表は『ドリームチーム』と呼ばれた。今回のチームをレブロン・ジェームズは『アベンジャーズ』と表現した。ジョーダンとレブロンが常に比較されるように、2つの時代の異なるアメリカ代表もこれから比較されることになるだろう。 指揮官カーにその議論に加わるつもりはない。それでも今回のチームを称賛せずにはいられなかった。「レブロン、ステフ、KD(ケビン・デュラント)という史上最高の3人が同じチームでプレーするのを見ることができたのは素晴らしい。『ドリームチーム』と今回のチームの違いは、勝つのが難しいことだ。当時は苦労しなかったが、今は世界中でバスケのレベルが上がっている。だからこそ、彼らが力を合わせてアメリカのために金メダルを獲得したのは、本当に素晴らしいんだ」