ユニセフ・子どもの幸福度調査で総合1位 オランダの“教育の実態"とは…ブログやSNSで語られる「素晴らしさ」は本当か、現地在住日本人が検証
このように「みんながみんな同じ教育」ではなくても問題がないのは、オランダ社会に根付く多様性や、個性を尊重する考え方が根底にある。みんな違って当たり前、それを1つの型に収めようとするほうが難しいならば、一定の枠組みのなかで自由にしたほうが合理的なのだ。 学校内でも「みんな同じ足並みでやりましょう」という場面は、日本に比べて少ない。 たとえば勉強ができる子は特別クラスや飛び級制度がある。苦手な子は無理に進級させず、もう一度同じ学年を履修する。読み書きが苦手な識字障害の生徒には、特別な体裁の本が使われる。
つまり、無理を強いたりつらい思いをさせたりするよりも、個々に合う方法でステップアップしていくことを重視している。 またマイノリティへの理解も深く、小学生の時点で性自認が異なることを公表している子もいれば、同性愛カップルの両親を持つ子どももいる。移民も多く、肌や髪の色、生活習慣も多様だ。 ラマダン(イスラム教徒の「断食」期間)の時期にはお弁当を持ってこない子もいる。もちろんいじめや差別がまったくないわけではないが、海外から移住してきた子どもも比較的なじみやすい環境だと思う。
「画一で標準的」な日本の教育とずいぶん違う「多様で個性的」なオランダの教育。どちらが良い悪いではなく、それぞれの歴史が育み、社会が望んで形成してきた教育の形だ。
福成 海央 :オランダ在住ライター、科学コミュニケーター(海外書き人クラブ)