ユニセフ・子どもの幸福度調査で総合1位 オランダの“教育の実態"とは…ブログやSNSで語られる「素晴らしさ」は本当か、現地在住日本人が検証
だが、筆者は「ネットで情報を提供している人たちはうそつきだ」とか「誇張しすぎているから気をつけろ」と言いたいわけでは決してない。 実はオランダの小学校は、学校によって教育方針がかなり違うのだ。つまり、発信者たちの「私の子どもが通う学校ではこうなんだよ」という個人的な経験が、あたかも「オランダ全国一般的な教育方法」かのように広まっている点に注意する必要がある。 ■多様な教育方法が許される理由 では、なぜこのような多種多様な教育が可能なのか。
まずオランダでは憲法23条にて「教育の自由」がうたわれている。これは日本国憲法でも保障されている「学問の自由」の「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」という「教育を受ける側」の話ではなく、「教育機関を設置する側」の自由のことである。 大きく分けると以下の3つだ。 1 学校設置の自由 2 教育理念の自由 3 教育方法の自由 これにより、「誰でも」「どんな理念でも」「どんな手法でも」、学校を設立することが認められている。
その背景は19世紀初頭にさかのぼる。 当時は、キリスト教やユダヤ教など、宗教の教えに基づく教育を行う学校の認可や、公立校との補助金の格差をなくす運動が長く続けられていた。その結果1917年の憲法改正により、上述の「教育の自由」が認められるようになった。 現在は、さまざまな理念のオルタナティブ教育の学校も加わり、「オランダでは100の学校があれば、100の教育がある」とまで言われるようになった。 もちろん学校設立時には厳格な審査がある。カリキュラムにおいても、オランダ語や算数など最低限の科目、授業時間数などの条件は守らないといけない。また、毎年政府や自治体による審査が入り、教育の質や経営体制が保たれるようになっている。
筆者の住む自治体には、日本の公立校の感覚に近い一般的な教育を行う小学校が多い。ただ日本のように「学習指導要領に沿って、どこでも同じ内容の教育を受けられる」わけではない。 市内の隣接する小学校を比べても、使う教科書、音楽や図画工作にあてる時間数、校外活動の有無など、違いは多い。授業時間ですらも、筆者の子どもが通う小学校では下校時間が15時で、水曜は午前授業だけだが、隣の小学校は毎日14時下校だ。 ■多様性と個性を尊重するオランダ