年間授業料260万円の学校に日本人の子どもが通えるか…歴史的円安で進む「日本の途上国化」の厳しい実態
■打撃を受けたのは庶民の暮らしだけではない このことを実際の問題として示すためにアベノミクス導入後2年間の円安(1ドル80円から120円への円安)の影響を図表2で確認しておきたい。 どちらの年にも数量ベースの輸出入は殆ど変化がないいが、価格ベースの輸入だけが急増して純輸出の赤字が激増している。これが過去とは異なる日本の現状であって、こんな状況の下で円安を作り出したアベノミクスとは何だったんだろうと思う。 前述のように輸出企業は膨大な追加利益を上げ、それによって株式所有者も大きな利益を上げたのであるが、日本のマクロ経済としてははっきりマイナスであったのだと言わなければならない。もちろん、これ以外にも、輸入財を購入する庶民や輸入系企業の不利益はもっと直接的であったのではあるが……。 したがって、ここでのポイントは現在の状況下では為替レート安は非常に危険であること、そして、その結果、「国際収支の天井」と抵触するような「途上国状況」に陥ってしまっているということである。これらがすべて弱体化するドル体制維持の目的から始まっていることを確認しておきたい。 ■アメリカに「出稼ぎ」に行く日本人女性たち したがって、こうして日本の所得水準が国際基準からして下がってしまうと、今度は企業の側も行動様式を変えることになる。貧乏な日本人相手の商売ではなく、金持ちの外国人を相手にしようとの行動の変化で、加谷珪一氏は自分の性を外国人に販売する女性の増加を紹介している(※)。 ※「貧しくなったニッポンは『途上国型経済』を受け入れるのか…?高所得国に返り咲く最後のチャンスが迫る」講談社ウェブサイト『現代ビジネス』2024年3月6日 これは、そうした目的でアメリカに渡航する女性たちとその経営者が2024年1月に警視庁に捕まった、他方でそれと間違われた日本女性がハワイへの観光旅行で入国を拒否されたという話の紹介としてである。 こうした「商売」が発生していることも情けないが、日本の若い女性たちがアメリカ人からそのように見られるようになったということも深刻である。過去に日本人が東南アジア諸国の女性に対して持っていた偏見・蔑視が今、日本に向かおうとしているということになるからである。