年間授業料260万円の学校に日本人の子どもが通えるか…歴史的円安で進む「日本の途上国化」の厳しい実態
■異常な円安は日本を途上国にする ただし、実は、この異常な円安は日本をもっと根本的なところで途上国化しているという実態がある。 というのは、ここまで円安が進むと従来通りの輸入をすればドル・ベースの支払い代金が膨張して貿易収支が赤字化する(すでにしている)が、その状況でさらに輸入を増やすような国内景気の改善がご法度となるという問題である。少しの景気回復でも起きれば輸入が増え、それが貿易収支と経常収支を悪化させて外貨準備の上限に達してしまうからである。 もちろん、円価値が高ければ簡単にドルを購入してこの制約を突破できるが、2012年初頭と比べて円価値を半分にまでしてしまったら、そうはならない。そして、この場合、金利を上げるなどして経済を冷やす以外なくなるのである。 ■貿易収支全体にとって大きなマイナス 実のところ、こうした状況の到来は私だけが言っているのではなく、『エコノミスト』が今回の円安を論じた特集でも指摘している点で(※)、「国際収支の天井」と言われるこの状況は過去にも1970年ごろまでの日本で存在したこと、その後の日本はそうではなくなったものの、途上国には一般的な状況として存在し続けていたことを主張している。 ※近條元保「経常収支が発する警告“途上国”化する日本」『エコノミスト』2024年6月4日号 逆に言うと、一旦「先進国」となった日本がここにきて再び「途上国化」しているということになる。 あるいはもう少し理論的に次のように説明することができる。1970年代以降の元気な日本は為替レートの下落が数量ベースでの大幅な輸出拡大をもたらし、よって貿易収支⇒国際収支も拡大させる効果を持っていたのであるが、現在はそうではなく、逆に輸入財の支払額の高騰で貿易収支全体にマイナスの効果を与えてしまっている。 これは、現在のようにすでに製造業の生産拠点が海外に移転し、海外に拠点を持つ日本企業の利益が日本に還流せず海外に再投下されるようになると生じる現象で、ここに至ると為替レートの切り下げは悪影響の方が大きくなるのである。