島田珠代、笑いで覆い隠した“娘と別居”の苦悩 「娘と仲良くなれるなら芸を捨てられる」と思った
舞台では今でも毎回緊張してますね。いつも本番前は舞台袖で三角座りして下向いて考えごとをしているので、「珠代ちゃん、暗いな」ってよく言われるんですけど、それにはちゃんと理由があって。私は一回一回、本番にやることを頭の中でシミュレーションしているんです。 いつも同じようなギャグをやっているんですけど、シミュレーションしないと自分でも新鮮味がなくなって、面白くなくなるんです。繰り返し同じことを考えることで、自分の中でリセットされて、同じ流れの中で新しく違う動きを入れられたりもする。だから、私の中では必要な作業なんですよね。
■泣いているとき東野幸治にかけられた言葉 ――珠代さんは学生の頃から、友達の前でギャグやモノマネをやるような明るいキャラクターだったそうですが、二丁目劇場のオーディションに受かってプロとして活動するようになってから、意識ががらっと変わったそうですね。 そうですね。学校では何クラスも回って、一発ギャグや先生のモノマネをしたら、絶対に大爆笑が来てたんです。でも、プロになって劇場に立ったら現実を見せられて、もっとネタを考えないといけないと思って、どんどん余裕がなくなってきたんですよね。友達からも気を使われて、遊びにも誘ってもらえなくなったりして。
そんなときに、二丁目劇場でネタを思い出せなくて頭が真っ白になる事件が起こるんです。舞台上で何も言葉が出てこなくなって黙っていたら、女子高生のお客さんたちが「がんばって!」って応援してくれて、それが余計につらくて。 舞台を下りてセットの隅っこに入り込んで泣いていたら、先輩の亀山房代さんに声をかけてもらって。「私は1人ではネタができないけど、珠代ちゃんはネタをやる根性があるんだから、そんなことで泣いたらあかん」って励まされて。
その後で2人でしゃべっているのを見ていた東野(幸治)さんも寄ってきて、「これからもっと広いところに行くねんから、こんな狭い土俵で泣いたらあかんで」って言ってくださって。そのときに、ああ、芸人の世界っていいなあ、と思いました。 ――そんな二丁目劇場での経験を経て、吉本新喜劇に入ることになり、そこでもまた苦労をしたそうですね。 二丁目劇場のお客さんは若い女の子ばっかりだったんですけど、新喜劇をやっているなんばグランド花月は、子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い客層だったので、二丁目でやっていたようなことをやっても全然ウケなかったんです。