米軍を渡り歩いた日本男児・サイトウ曹長の冒険譚「若い頃に『沈黙の艦隊』を読んで、いつか海に出たいと思った」
そんな類を見ない経歴が生かされた指導方法から、年度優秀教官に選ばれたこともある。 生徒がテクニカルマニュアルを手に榴弾砲を囲んで調べる中、サイトウは自分が青年だった頃、米海軍に入隊しようと、米海軍横須賀基地のある京浜急行横須賀中央駅に降りた日を思い出していた。 ■『沈黙の艦隊』と『トップガン』が変えた男の人生 「実は自分、漫画の『沈黙の艦隊』が大好きで。若い頃に読んでからずっと潜水艦に乗りたいと思ってたんです」 インタビューに答えるサイトウ曹長は、米軍を志した理由を懐かしそうに語る。 「あと映画『トップガン』を見て。戦闘機パイロットのあの米海軍の白い制服にも憧れました。 そして、『JSA』っていう韓国映画。38度線上にある共同警備区域(JSA)で大韓民国国軍(韓国軍)と、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士の間に友情が芽生える物語。兵士が見ても面白いといわれる名作です。 でも、やっぱり『沈黙の艦隊』が忘れられず、最終的に海を選び、横須賀に向かいました」 米海軍横須賀基地の中には海上自衛隊第2潜水群司令部もある。しかし、サイトウ青年はそれを横目に、米海軍原潜を目指す。 「横須賀基地には、自衛隊でいう地本(地方協力本部)のような事務所があって、入隊の手続きをやってくれるんです。ただ、一般人が行っても無理です。自分はしゃべれないこともあるので、これ以上は伏せさせてください」 横須賀基地内に「US NAVY Recruiting Station Japan(海軍募集事務所)」は確かにある。しかし、入隊するには米国市民権、または永住権(グリーンカード)を保有していることが必須条件になっている。 サイトウ曹長がしゃべれないことの中に米海軍入隊を可能にした何かがあると推察するしかない。 「書類を書いたら入れると思ったら『ASVABという試験を受けろ』って言われて。それから2ヵ月勉強して受けました」 ASVABは陸海空のどの軍に入るにせよ受けなければならない10科目に及ぶ試験で、その成績で適性を見られ、配属が決まる。