日銀・黒田総裁会見10月31日(全文1)物価見通し、17年度はいくぶん下振れ
日銀・黒田東彦総裁が金融政策決定会合後の午後3時半から記者会見を行った。 ※一部、判別できない個所がございますことをご了承ください。
金融決定会合の決定と17年度の物価の見通しが下方修正された展望レポートの背景とは?
時事通信:幹事社の時事通信、〓タカハシ 00:00:36〓です。よろしくお願いいたします。幹事から3問、質問させていただきます。まず本日の金融決定会合での決定と17年度の物価の見通しを下方修正された展望レポートの背景などについてお聞かせください。 黒田:はい。本日の決定会合では長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下で、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち短期金利について日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利について10年物国債金利が0%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行います。買い入れ額についてはおおむね現状程度の買い入れペース、すなわち保有残高の増加額、年間約80兆円をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営することとします。また長期国債以外の資産買い入れに関しては、これまでの買い入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。 本日は展望レポートを決定、公表しましたので、これに沿って先行きの経済・物価見通しと金融政策運営の基本的な考え方について説明いたします。わが国の景気の現状については所得から支出への前向きの循環メカニズムが働く下で緩やかに拡大していると判断しました。やや詳しく申し上げますと海外経済は総じて見れば緩やかな成長が続いています。そうした下で輸出は増加基調にあります。国内需要の面では、設備投資は企業収益や業況感が改善する中で緩やかな増加基調にあります。個人消費は雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅さを増しています。この間、公共投資は増加しており、住宅投資は横ばい圏内の動きとなっています。以上の内外需要の増加を反映して鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けています。また金融環境は極めて緩和した状態にあります。 先行きについては、わが国経済は海外経済が緩やかな成長を続ける下で、極めて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に景気の拡大が続き、2018年度までの期間を中心に潜在成長率を上回る成長を維持するとみられます。2019年度は設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって成長ペースは鈍化するものの景気拡大が続くと見込まれます。実質GDP成長率に関する今回の見通しを従来の見通しと比べますと、おおむね不変です。 次に物価面では企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどを背景にエネルギー価格上昇の影響を除くと弱めの動きが続いています。もっともマクロ的な需給ギャップが改善を続ける下で企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も上昇するとみられます。この結果、消費者物価の前年比はプラス幅の拡大基調を続け2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。今回の物価見通しを従来の見通しと比べますと、2017年度について、いくぶん下振れていますが、2018年度、2019年度についてはおおむね不変です。 リスクバランスについては、経済についてはおおむね上下にバランスしていますが、物価については下振れリスクのほうが大きいとみています。物価面ではマクロ的な需給ギャップが改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も次第に上昇するとみられる下で、2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要があります。 なお展望レポートについては片岡委員が物価の前年比について来年以降2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして先行きの物価見通しに関する記述に反対されました。日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。また生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続します。今後とも経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。