フィリピン株式市場「2024年新規上場数」目標未達の見込み…2025年は50%増を見込むも「トランプ次期米国大統領就任」が懸念
フィリピン「外国からの投資マネー」流入超過を記録
フィリピン中央銀行(BSP)のデータによると、2023年10月は短期外国投資の流出額が流入額を上回り、純流出額は5億2,968万ドルに達しました。これは前年同月の3億2,819万ドルの流出額を上回り、2023年9月の10億3,000万ドルの純流入から反転した形です。 「ホットマネー」とも呼ばれるこれらの外国証券投資は容易に出入りする特性があり、10月の総流出額は前年同月比で56.7%増の20億1,000万ドル、前月比でも33.4%増加しました。流出先としてはアメリカが全体の44.2%(8億8906万ドル)を占めて最多となっています。一方、総流入額は前年同月比55.1%増の14億8,000万ドルでしたが、前月比では41.5%減少しました。 10月の投資家の主要な出身国は、イギリス、シンガポール、アメリカ、ルクセンブルク、マレーシアで、これら5ヵ国が流入額の87.8%を占めました。投資先としては、54.5%がフィリピン証券取引所上場の銀行、持ち株会社、運輸、不動産、食品・飲料・たばこ業界に向けられ、残り45.5%はペソ建ての政府証券に投資されました。 2023年1月から10月の期間では、BSP登録の外国投資は24億9000万ドルの純流入を記録し、前年同期の7億1,543万ドルの純流出から大幅に改善しました。この期間の総流入額は150億2,000万ドル、総流出額は125億2,000万ドルです。 BSPは2024年の外国証券投資が42億ドルの純流入を記録すると予想しています。一方、中東の地政学的リスクやフィリピン国内の財政再建、成長の勢いに関する懸念が投資家の慎重な姿勢を強め、資本流出を増加させたとの指摘もあります。 FRBの政策金利引き下げへの期待が資金流入を促す可能性がある一方で、現時点では慎重な市場環境が資本流出を後押ししているとされています。さらに、フィリピン中央銀行は10月25日に市中銀行の準備預金率(RRR)を9.5%から7%に引き下げ、銀行システムに約4000億ペソの資金を供給しました。これにより、銀行が融資可能な資金や債券、株式、外国為替などの投資に充てる資金が増えると期待されています。 また、フィリピンの信用格付けの改善も投資家心理を後押ししています。S&Pグローバル・レーティングは先週、フィリピンの投資適格格付けを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げ、同国の成長ポテンシャルと各種制度の強化を評価しました。
家村 均