名古屋がルヴァン杯を初V…柿谷曜一朗は古巣セレッソ撃破に何を思ったか?
キックオフから前田との2トップを皮切りにトップ下、1トップとシステムによってポジションを変えた柿谷が放ったシュートは前半のわずか1本。疲れもあったのか、後半14分に訪れたチャンスでは足をもつれさせてシュートすら打てなかった。 それでも、試合後にセレッソの選手たちと交わした言葉が柿谷の胸に響いた。 「名古屋が強いときは、こういうサッカーだよね」 攻守両面で泥臭さを前面に押し出し、集中力を研ぎ澄ませながら、決して多くはないチャンスを確実にものにする。昨シーズンまで苦楽をともにした仲間たちの言葉は、今シーズンの名古屋の戦いをあらためて思い出させ、そして柿谷の心を震わせた。 「もし結果が逆やったら、僕はセレッソの選手たちみたいに『おめでとう』と言えるかなと思って。何か温かさみたいなものを感じたし、あらためて素晴らしい選手たちと昨シーズンまでサッカーをしてきたんだな、と。移籍1年目でタイトルを取れたのは本当に嬉しいけど、一緒にやってきた仲間たちの素晴らしさも見られて幸せです」 後半28分にピッチを後にした柿谷は、ベンチで大きな声を張りあげ続けた。 「残り時間が長く感じられるだろうなと思ったので、長く感じないようにみんなでワイワイと。ワイワイというか、プレーしている選手たちを鼓舞しながら、優勝する雰囲気というものをベンチから作っていこうと思っていました」 同じくセレッソから加入したDF木本恭生とともに、4年前はルヴァンカップに加えて天皇杯も制覇した。ただ、中谷やMVPに輝いた稲垣、先制点を決めた前田、左サイドで奮闘した相馬、ハードな守備が光ったDF吉田豊と、埼玉スタジアムのピッチに立った名古屋のチームメイトたちの多くは、タイトルを獲得した経験がない。 今シーズンもJ1リーグを制する可能性はすでに消滅し、日本勢で最後まで残ったACLも準々決勝で姿を消し、前述したように天皇杯も敗退した。最後に残ったルヴァンカップを手にした名古屋だが、来シーズンへつながる戦いはまだ残されている。 3位に食い込めば来シーズンのACL出場権を得られるなかで、名古屋は勝ち点58で浦和レッズと並び、得失点差で4位につけている。3位のヴィッセル神戸との勝ち点差は3ポイントで、浦和をはさみ、鹿島アントラーズも勝ち点56で追いすがる。 残りは5試合。ひとつも負けられない戦いが続くなかで、柿谷をして「いざ戦ってみるとすごく楽しかった。思い出に残るゲームができた」と言わしめたセレッソとの対戦が最終節のひとつ前、11月27日に思い出深い敵地・ヨドコウ桜スタジアムで組まれている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)