「奥歯を焼け火箸で刺されたような痛み」三叉神経痛の治療法とは…圧迫している血管を神経から離す手術やガンマナイフ、専門家「まずは医療機関に相談」
歯自体に異常は見当たらない。インターネットで調べてみると、聞いたこともない脳神経の病名が出てきた。すぐに同府羽曳野市の城山病院の脳神経外科を受診。予想通り、「 三叉(さんさ)神経痛」と診断された。
三叉神経は、脳幹から延びて3本に分かれる神経で、主にひたい、ほお、あごの3か所の知覚を担う。脳幹に近い根元部分のそばを走る血管が曲がり、神経を圧迫すると激痛を引き起こす。
洗顔や歯磨き、食事などの動作が誘発することが知られる。痛みは5~20秒程度、長くても2分以内に治まるのが特徴で、これらの症状や磁気共鳴画像(MRI)検査で診断される。抗てんかん薬としても使う「テグレトール」の内服が有効で、薬の効きの有無で病気かどうかを見極める「診断的投与」も行われている。
再発率は数%
A子さんもテグレトールで痛みを抑えていたが、「生きる気力をなくすくらいの痛みは恐怖でしかない」と、根本的治療である「脳神経減圧術」の手術を選択。2か月後の11月、圧迫している血管を神経から離す手術を城山病院で受けた。
耳の後ろに10円玉大の穴を開け、神経から離した血管が再び圧迫しないように特殊なのりを使って固定。手術は全身麻酔の時間も含めて約4時間で終了し、翌日以降、痛みは消失した。
全身麻酔が難しい人には、放射線を神経に照射して痛みを緩和する「ガンマナイフ治療」も保険適用されている。再発率は減圧術で数%、ガンマナイフで3割程度という。
同病院脳神経減圧術研究所の近藤 明悳あきのり 所長によると、同じような原因で起こる「顔面けいれん」にも減圧術は有効で、「いずれの病気も日常生活に大きな支障が出る。まずは脳神経を専門とする医療機関に相談し、適切な治療を受けることが重要だ」と話している。(冬木晶)