アックスヤマザキの工場内で行われている「TOKYO OTOKOミシン」の検品作業＝大阪市生野区（南雲都撮影）

レザー（皮革）やデニムなど厚手の生地を縫ってアウトドア用品や雑貨などをつくれ、男性も使ってみたくなる家庭用ミシンを、社員約20人のミシンメーカー、アックスヤマザキ（大阪市生野区）が開発、販売して人気を集めている。それまでにも子育て中の女性や高齢者らの事情に寄り添ったミシンを次々に開発。ミシンの需要が低迷する中、廃業寸前だった会社が斬新なアイデアでよみがえった。 【写真でみる】家業の危機的状況を聞かされて入社したという、アックスヤマザキの山崎一史社長 黒い光沢を放つレトロな形状のミシン。針が力強く動き始めると、レザーの名刺入れや財布、眼鏡ケース、デニムパンツなどが次々にできあがっていく。 同社では「TOKYO　OTOKO（オトコ）ミシン」（税込み4万4千円）の検品、調整作業に忙しい。令和4年11月の発売から3日間で限定100台が完売し、反響が大きく販売を継続。人気が続いており、一時は4カ月待ちになるときもあったという。 重量11・6キロの鉄製ボディーで高い耐久性と安定性を実現。厚い生地でも縫えるように一般の家庭用ミシンよりも強度の高い針を採用し、職業用ミシンと同等のハイパワーモーターを搭載した。 「これまでミシンを使ったこともない男性でも『何かつくってみたい』と思ってもらえれば」。同社の山崎一史社長（46）はそう語る。狙い通り、顧客からは「こんなものまでミシンでつくれるんですね」と驚きの声が漏れる。「夫婦で（ミシンを使いながら）時間を楽しみたい」と購入する例もあるという。 同社は昭和21年に山崎さんの祖父が創業。市販の衣類が手軽に買えるようになって家庭用ミシン市場は縮小し、国内の生産台数は平成7年の約84万台から近年は約4万台となっている。 山崎さんは17年、父から家業の危機的状況を聞かされて入社し、27年に3代目社長に。人の集まる場所に出かけては聞き取り調査を重ねた。そこでは「ミシン？ちょっとぐらいならやりたいかな」という声が多く、「やったことのない人に使ってもらえるミシンをつくろう」と考えた。 そうして生まれたアイデア商品の一つが、海外にも発信しやすいよう商品名に「TOKYO」を冠した「オトコミシン」。キャンプ用ナイフケースなども縫えるため、アウトドアブームに乗った。「必要な物を自分でつくることに価値が生まれている」と手応えを感じている。