「相続放棄」したはずなのに故人の借金の請求が届きました! 相続放棄をしたので借金の請求は払わなくてよいですよね?
人が亡くなると、悲しみのなかでも、お世話になった方へのあいさつや自治体への届け出、そして故人の財産に関する手続き等、やらなければいけないことが多くあります。 とくに、相続財産(故人の財産)については、現預金や不動産など「プラスの財産」だけでなく、借金(負債)など「マイナスの財産」も含まれるため、慎重に手続きを進める必要があります。誤解や思い込みがあった場合は、相続人の今後の人生に思わぬ影響も与えかねません。 今回は、相続手続きにおいて注意すべき「相続放棄」について事例をもとに解説します。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
「相続放棄したはずなのに故人の借金の請求がきた」
まずは、相談者(50代既婚女性)からの質問を事例として挙げます。 「夫は『相続放棄した』と言っていたのに亡くなった義父の借金の請求がウチに来ました。夫は借金を負担しなくてはならないのでしょうか。」 亡くなられたのは相談者の夫の父であり、相談者は相続人ではないため、基本的に相続手続きには関与しません。とはいえ、ある日突然、故人の借金の請求が夫宛てにきた場合には、夫だけの問題でなく、家族をも巻き込む一大事となり得ます。 ここで問題となるのは、夫がしたはずの「相続放棄」についてです。
「相続放棄」という選択肢
「相続」とは、亡くなった方の財産を引き継ぐことをいいます。財産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。現預金等の資産(プラス財産)よりも借金額(マイナス財産)が上回るといったような場合には、すべてを引き継がない「相続放棄」を選択することもできます。 相続放棄した人は、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。そのため、被相続人(故人)に多額の借金があっても払う必要はありません。注意点としては、後になって借金を上回るプラスの資産があることが判明しても受け取ることができないことです。 ■「相続放棄」のながれ~家庭裁判所への申し立て~ 相続放棄をする場合、相続人は家庭裁判所に対して、被相続人の戸籍謄本、除票および相続放棄する人の戸籍謄本などの必要書類とともに、相続放棄をしたい旨の「申し立て」を行います。 相続人は相続があったことを知ったときから3ヶ月以内であれば、1人でも申し立てを行うことができます。家庭裁判所では、提出した書類に矛盾点がないかといった審査をしたうえで、問題がなければ相続放棄が認められます。