旧ビッグモーターの経営を引き継いだWECARS、火中の栗を拾った田中慎二郎社長が挑む組織風土改革の現在地
■ 経営と現場の距離は近すぎてもうまくいかない ──WECARSで伊藤忠商事子会社の「ほけんの窓口」の相談サービスを7月から開始しましたが、不正が起きないようにするには何が重要だと考えますか。 田中 たくさんありますが、やはり透明性だと思います。ユーザーの皆様には、整備の様子や、どんな料金がチャージされているかといったところが非常に分かりにくいので、しっかり説明して、どんな作業を行っているか理解していただけるようにすることが大事です。 今、工場は全てガラス張りで見えるようにして、整備士がお客様対応をしっかり行うようにしています。また、人間が手がけるとミスが起きる可能性が高い仕事に関しては、機械化・デジタル化していくことも考えています。 現在、われわれには保険の代理店権がないため特定の保険への勧誘などはせずに、任意保険に入りたいお客様に対しては、ほけんの窓口にお任せする形をとっています。 ──ほけんの窓口以外にも、伊藤忠グループとのシナジーを図れそうな部分はありますか。 田中 整備工場のプラットフォームを運営するナルネットコミュニケーションズと協業し、サービスの均一性を図ったり、整備を希望するお客様を紹介し合ったりする体制を取っています。 その先についてはファミリーマートの店舗を置いたり、伊藤忠の機械部隊の会社と協力したりするアイデアも出ていますが、そこは是々非々で判断していきたいと思っています。 ──今後のWECARSの経営において最も重視するポイントは。 田中 経営と現場の距離感がとても大事だということを、今回改めて気付かされました。距離感が近すぎても遠すぎてもおかしくなるため、経営側が方針を出して、現場に執行してもらうための適切な距離感が必要です。 今後も社員一人一人がお客様に誠実に向き合う“お客様ファースト”を実現するための組織風土改革を推進し続けていくことが何より大切だと考えています。
吉田 浩