旧ビッグモーターの経営を引き継いだWECARS、火中の栗を拾った田中慎二郎社長が挑む組織風土改革の現在地
■ 「人治」から「法治」への転換を図る ──社内制度や人材教育などの仕組みで気付いたことはありますか。 田中 会社にとって指揮命令系統や営業戦略などは大事なのですが、ビッグモーターはそれを支える人事、総務、経理などが極めて弱かったと思います。自動車分野は法令に関わる場面が多いにもかかわらず、法務部の人員もほとんどいなかったのですから。 人事制度にしても、昇格・降格の基準や内部通報制度がなく、行き当たりばったり的に、「法治」ではなく「人治」の組織になっていました。会社が小さいうちはそれでもいいのでしょうが、規模が大きくなると当然従業員の間で不公平感が出ますし、上長に気に入られようとか、この人には盾突かない方がいいとか、そちらばかりに関心が向くようになってしまいます。 ビッグモーターは基本的にトップダウンの組織だったので、店長は一国一城の主としてお店を任されると、意気に感じて働くようになりますが、問題が起きた時に本社から統一した対応基準が示されないしマニュアルもないので、店長が自分で解決しなければならない。それでは解決の手段も店舗ごとにバラバラになりますし、業績が下がることは許されない中で、会社のブランドより個々の立場を守る方向に進んでしまったのでしょう。 ──個人店をたくさん抱えているような組織で、クレーム対応もサービスの質もバラバラだったということですか。 田中 そういう見方もできますし、個人商店が大きくなってしまったとも言えるでしょう。報酬体系もたくさん売ったら給料を上げて、ミスしたら降格もあるという仕組みで皆を走らせていました。 それはそれで1つのやり方ではありますが、いざ問題が起きた時どうするかという共通認識がない組織でした。均一のサービスを提供できるように、今は整備の方で技術本部と研修本部を作り、どのお店、どの工場でも均一のサービスを提供できるようにしていますし、全国に128カ所ある整備工場を巡回監査しています。 ──会社発足から半年たち、社内やユーザーの雰囲気に変化は見られますか。 田中 社内に関しては、5月時点と比べるとオープンな雰囲気になりました。とにかく、ものが言えない、言っても聞いてもらえない組織だったので、ここに関してはずいぶん変わったと思います。そういう意味では、普通の会社になってきました。 これから広告宣伝を行っていきますが、今までのところはわれわれが事業を引き継ぐ前と比べると、販売は2~3割、買い取りは4割程度戻ってきております。 まだ社名が変わったこと自体、知らずに入ってくるお客様もいるので、組織風土改革はエンドレスで続けながら、こちらから認知度を高めていく活動をしていきたいと思っています。