貴重映像で振り返る終戦秘話と天皇陛下“平和への思い”【皇室 a Moment】
◾️天皇陛下 展示や映像などから知ろうとされる戦争の悲惨さ
陛下の慰霊で印象深いのは、2007(平成19)年、モンゴル訪問時に日本人の慰霊碑を訪ねて供花されていることです。旧ソ連によるシベリア抑留はよく知られていますが、モンゴルでもおよそ2000人が亡くなりました。かつてソ連圏だったモンゴルで、皇太子として慰霊された意味は大きいと思います。 ――海外でもこうやって慰霊を行われているんですね。 陛下の慰霊や平和への思いは、去年のインドネシア訪問前の記者会見からよくわかります。 天皇陛下:「私たち自身は、戦後生まれであり、戦争を体験していませんが、上皇上皇后両陛下からも折に触れて戦時中のことについて伺う機会があり、両陛下の平和を大切に思われる気持ちをしっかりと受け継いでまいりたいと思っております」
天皇陛下が決まって言われるのは、「戦争を知らず、平和の恩恵を享受してきた世代」というフレーズです。だからこそ、陛下は「展示や講演、書物、映像など、過去の経験に少しでも触れる機会を通じて、戦争の悲惨さ、非人道性を常に記憶にとどめ、戦争で亡くなられた方々への慰霊に努めたい」と話されます。それが陛下の“基本姿勢”だと思います。
来年はいよいよ戦後80年の節目を迎えます。その年に“戦争を知らない世代”の陛下が、どのように戦没者を悼み、どのように平和への思いを表されるのか、ウクライナやパレスチナ自治区のガザ地区で多くの命が失われている時代だからこそ、大きく注目しています。 ――そうした部分も注目したいと思いますし、皇室だけでなく私たちも「戦争を知らない世代」として引き続き知ることを続けていきたいと、改めて感じました。 【井上茂男(いのうえ・しげお)】 日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)