フランス料理の始発点で日本人が星を獲るには何が必要なのか?!『映画 グランメゾン・パリ』
2019年にTBS系列「日曜劇場」として放送されたドラマ「グランメゾン東京」の劇場版として制作されたのが『グランメゾン・パリ』だ。公開日前日放送のテレビスペシャル版と合わせて「グランメゾンプロジェクト」として計画されてきたものの集大成。 【写真】尾花夏樹(木村拓哉)がパリで奮闘、『グランメゾン・パリ』場面写真 ドラマ版の第1話「手長エビのエチュベ」では、尾花夏樹(木村拓哉)がフランスのパリから日本に出戻りしてきて、3年経った頃から物語が始まるが、今作では、ドラマ最終回から少なくとも5年後、舞台を再びパリに戻すことに。 一度は挫折したパリ。フランス料理の始発点に戻ることは、尾花にとっての”けじめ”ともいえる展開だ。 ただ、直接的に繋がっているというよりは、精神的な続編としての側面が強いかもしれない。というのも、もともと尾花はパリでミシュラン二つ星の独立店を出していたことや、尾花がパリの店を辞めるきっかけとなった「ナッツ混入事件」の汚名が晴らされた後というのに、パリでの食材仕入れには苦戦していたからだ。そして、その理由というのが、尾花の風評被害が残っているというよりは、外国人だからという点が大きいように描かれていた。 作中に「日本でフランス人が寿司屋を開業すると言って、一流のマグロが手に入るか?」といったようなセリフがあるように、アジア人がフランス料理の本場で店を出すことの苦労や困難といった、物流部分に焦点が当たっていることも多かった。 単純に二つ星から三つ星になることへの境界線のひとつがそこだったのかもしれないが、それだけではなく、冒頭では、仲間たちの意見を取り入れずワンマンで突っ走るキャラクター構造が、ドラマ版1話の状態に戻っているようにも感じた。 それもミシュランの星の重圧や責任も要因なのかもしれないが、ドラマ版での成長が一旦リセットされてしまっていたし、ドラマ版から移行されたキャラクター同士の繋がりの部分も、あえてドラマ版を意識しなくても良いように設定されている。 だからこそ逆に、ドラマの劇場版というよりは、尾花というキャラクター的には、リメイク、リブート的部分もある。つまり独立した作品として観ることができるように、あえそうなっているのかもしれない。そうだとすれば、ドラマ版のダイジェストが全く無いことや「グランメゾン・東京」メンバーがチラ見せ程度なのも納得できる。