平安文学への「熱」どう維持するか…大河ドラマ放送後の〝作戦会議〟 次世代に作品をつなぐ
『源氏物語』や『枕草子』の誕生が描かれた大河ドラマ「光る君へ」が最終回を迎えました。平安文学を愛する編集者のたらればさんは、「偉大な作品を『面白いものだから次世代につないでいこう、残していこう』という人がいたから、千年も残った。これもすばらしいこと」と語ります。(withnews編集部・水野梓) 【画像】初公開の「紫式部図」 平安文学が与え続けるインスピレーションとは
ドラマでの「雲隠」「幻」の描かれ方
withnews編集長・水野梓:最終回では、まひろ(吉高由里子さん)が「光る君の最期を書かなかった理由」を道長(柄本佑さん)に伝えていましたよね。 「幻がいつまでも続いてほしいと願ったゆえ」「私が知らないところで道長様がお亡くなりになってしまったら、私は幻を追い続けて狂っていたやもしれませぬ」といった台詞がありました。 これは、『源氏物語』の『幻』『雲隠』のところのことかな、と思いましたが…。『雲隠』は、光源氏の「死」を暗喩する、何も書かれていない帖のことですよね。 たらればさん:そもそも『源氏物語』は、54帖それぞれの「帖」のタイトルを誰がつけたのか、諸説あります。主流の研究では、おそらく後年に(つまり「紫式部以外のだれか」が)章題をつけたんじゃないかと言われています。そのいっぽうで、このドラマではもともと「帖」にタイトルがついている親切設計にしていたんですね(笑)。 水野:女房たちが総出で冊子をつくっていたとき、まひろがタイトルの紙を貼っていましたもんね。分かりやすいですよね。 たらればさん:その上で、「幻のままでいてほしい」というせりふはうまいなと思いました。『幻』という帖は、光る君が最期の1年を過ごしながら、季節に合わせて自分の人生を振り返る内容です。 春になってこんなことがあって、夏は、秋は、冬に……と。そして、あぁこの1年が終わって、わたしももうすぐあの世へいくんだなぁ……というラストなんですね。そして『雲隠』がはさまれ、次の帖では光る君が亡くなってから8年後ぐらいの世の中になっているんです。 そういう並びを意識した上での、まひろのセリフなんだなと。道長が亡くなったのは12月なので、それもひっかけているんだなと思いましたね。 水野:なるほど~~~。 たらればさん:いや~やっぱり『源氏物語』は面白いなぁと改めて思いますよ。 水野:ちなみにリスナーさんからの質問で、「道長の辞世の歌ってなかったんですか」というものがありました。 たらればさん:道長もあの時代の貴族ですから、たくさん和歌を読んだはずですが、わたしの知るかぎり、道長の辞世の句は見たことがありません。それどころじゃなかったのかな…と思います。最期はだいぶ苦しんで亡くなったと『栄花物語』にありますし。