平安文学への「熱」どう維持するか…大河ドラマ放送後の〝作戦会議〟 次世代に作品をつなぐ
江戸時代に一番刷られた「偽紫田舎源氏」
水野:最終回のラストはまひろの力強い表情で「嵐が来るわ…」というセリフで終わりました。次の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」へのバトンタッチみたいに感じるところってありましたか? たらればさん:本編にはありませんでしたよね。せっかく次のドラマは出版人、パブリッシャーを描くわけですから、出してもよかったのになとは思いました。 「べらぼう」の蔦屋重三郎が活躍した江戸時代、印刷技術が発達して識字率が高まり、庶民に広く読まれる「ベストセラー」が生まれた時代です。 江戸時代にいちばん刷られたのが『源氏物語』のパロディー本「偽紫(にせむらさき)田舎源氏」(1829年から発刊)です。いわゆる二次創作もので、そこを「光る君へ」本編とひっかけたりするのかなって思いましたが。
「登場人物、みんな好きになった」印象に残るキャラ
水野:リスナーさんからアンケートで、「大河ドラマのたらればさん的ベスト配役が聞きたいです」という質問もいただいていました。 たらればさん:ええと、ベスト? それはもちろん……清少納言役のファーストサマーウイカさんです。 不勉強ながら発表されたときはファーストサマーウイカさんを存じ上げなくて、ファースト、サマー、ウイカ、さん??と、「?」が頭の中に25個ぐらい浮かんだんですが(笑)。ドラマが始まったら、これ以上ないぐらいのハマり役でしたね。余人をもって代えがたい配役でしたが……さすがにこれは特別枠ですよね。 水野:そうですね(笑)。別の登場人物でいるでしょうか(笑)。 たらればさん:一条天皇を演じた塩野瑛久さんはすばらしかったですね。 水野:帝というやんごとない人ならではのオーラがありましたね~。 たらればさん:はかなげさ、可憐さもありましたよね。 定子さま(高畑充希さん)が伊周の今後を一条帝に頼みにいった時、「お健やかに」と頭を下げたシーン。一条帝が振り返って思わず定子さまを抱きしめましたよね。あらためて「このドラマ、最高だ……最高だぞ……」とつぶやきながら見ていました。今後の人生でもたびたび思い返すと思います。 水野:初期の登場ですが、段田安則さん演じる兼家(道長の父)もすごかったですよね。わたし、ドラマ前に抱いていた道長のイメージって、兼家そのままでした。 たらればさん:でしたでした。これが道長でいいのでは?って思いましたね。 水野:それに陰陽師の安倍晴明を演じたユースケサンタマリアさん。すごい存在感でした。 たらればさん:晴明、亡くなる直前に「呪詛も祈とうも心の持ちようなのです」って言ってましたよね。それまでさんざん呪詛や祈とうで政治をコントロールしておいて、「最期におまえがそれを言うのかーー!」って感じじゃないですか(笑)。 水野:そうですよ~。道長も最終回まで「寿命を10年あげるんじゃなかった」って悩んでましたよ。 たらればさん:いい伏線回収でしたよね。花山天皇の本郷奏多さんとかもそうですが、まひろと道長の周辺を支える配役がすばらしかったですね。 水野:リスナーさんから「最終的には登場人物、みんな好きになりました」ってリプをいただいて、すごく同感です。 たらればさん:まひろの母を殺した敵役のはずの道兼(玉置玲央さん)とか、最後は「死なないで」って思っちゃいましたもんね。 水野:そうでしたねぇ~。振り返ると、濃厚な1年でしたね。