「親が介護施設に移ったので空いた実家を人に貸す」それ、大損することになります
相続した不動産の登記変更を放置するのはNG?
Case7:相続した不動産の登記変更は期限がないので、後回しにした 不動産には「どこの、誰が、権利を所有しているか」を記した「登記簿」がある。所有者が亡くなったり、売買があったりしたときは、登記を変更する必要がある。 「しかし登記変更にはおカネもかかりますし、不動産を売ったりしなければ登記変更しなくても、すぐに困ることはありません。そのため登記変更せずに放置している人が多いのです」(前出・天野氏) だが、登記変更していない不動産は「時限爆弾」のようなものだ。 土地の所有者Aさんが、登記変更せずに亡くなったとしよう。3人の子供(B、C、D)がいた場合、全員が合意しないと登記変更、売却はできなくなる。しかもBさんが亡くなっていれば、その子へと所有権が移っていく―。 こうして「ねずみ算」式に不動産の権利を持つ人が増えていき、不動産の処分がますます難しくなってしまうのだ。 「'24年4月1日からは、相続登記が義務化されました。登記変更しないまま3年を過ぎると、最大10万円の過料の対象になってしまいます」(天野氏) 答え→×。放置は厳禁、司法書士などに頼んで確実に登記変更する。
生前贈与はできるだけ早くにやるべき?
Case8:生前贈与は早めにやるべきだと思い、60代のうちから始めた 財産を受け継いでいく準備も始めたい。節税に繋がる「生前贈与」も選択肢に入ってくる。 では、いつ贈与を始めればいいのか。年間110万円まで非課税となる「暦年贈与」の制度変更も報じられており、贈与を焦る人もいるだろう。 '24年以降は、生前贈与の「持ち戻し期間」が3年から7年に延長される。これは贈与が認められる期間のこと。簡単にいえば、死亡時から遡って7年間の間に行われた贈与には、相続税がかかってくるのだ。 とはいえ早いうちから贈与をしてしまうと、想定外の長生きや病気などで、老後資金が枯渇してしまう可能性もある―。 しかし実は'24年から、このジレンマを解決する「裏ワザ」が使えるようになる。なんと「持ち戻し期間」を実質的に撤廃できるようになるのだ。 「鍵を握るのは『相続時精算課税制度』です。これは、贈与を受けた子供や孫が翌年の2月1日~3月15日に税務署に届け出ることで、2500万円まで非課税で生前贈与を受けられる制度です。ただし贈与分には後から相続税がかかるため節税にはならず、利用者も限られていました。 しかし'24年からは、贈与を受けて相続時精算課税制度の届け出をした人は、毎年110万円までなら、後から相続税が課税されない『基礎控除』が設けられることになったのです。しかもこの贈与は『持ち戻し』の対象にならないため、亡くなる直前の贈与でも認められることになります」(前出・橘氏) たとえば子供と孫(成人済み)が計5人いれば、年間で550万円を贈与できる。持ち戻し期間を気にする必要もないので、焦って60代のうちから贈与をする必要もない。人生のゴールが見え始めてから、相続税がゼロになるように圧縮すればいいのだ。 答え→×。長生きに備えて、贈与は遅らせたほうがいい。