「これモンキー? なに“カワサキ!?”」 漢のバイクと正反対な伝説のレジャーバイクとは オーナー「今そんな高いの?」
「全日本KV75ミーティング」に来た台数は…
KV75をけっこうボロカスに言う玉田さんでしたが、それも愛憎一体としたもの。今でも大切にメンテナンスし続け、長い所有歴の間には、KV75のオーナーズミーティングを実施した経験もあるといいます。 「30年くらい前の話ですが、雑誌の読者欄に個人が有志で『同じバイクのオーナーとミーティングする』告知を出すことがよくありました。︎KV75を乗っている僕の友達が『全日本KV75ミーティング』というものを主催し、僕も誘われて参加しました」 ミーティングの場所は東京のお台場。「必ずKV75の自走で来なくてはいけない」という縛りも設けたそうです。「年末の寒い時期でしたけど、どれだけのKV75が集まるのかなと楽しみにしていました」と話します。 「しかし、ミーティング当日にお台場に来たのは僕と友人と、雑誌を見て来てくれたもう1台だけ。白い息を吐きながら、3人だけでお互いのKV75を前に缶コーヒーを飲んで、そのままお別れして(笑)。あれは悲しかったですけど、でもそこで来てくれた方はすごく良い人で、後に友人にKV75の情報を仕入れたりすると、手紙を書いてくれたりしたそうですよ」
え、いまそんなに高いの!?
ところで、1970年代前半、各バイクメーカーからレジャーバイクが続々と登場しましたが、中半から後半にかけては、レジャーバイクブームが徐々に下火になっていきます。 人気の衰えが見え始めた頃に、日本国内で発売されたKV75は正直「時期が遅かった」印象は拭えませんでした。また、当時の日本の交通法規では50ccはヘルメットを着用せずに乗れ、その手軽さが人気でしたが、75ccはヘルメットが必要でした。このことも災いし、さほどヒットには至らずやがて姿を消しました。 それでも、いまなお中古車市場ではKV75がわずかながらに販売されています。その相場は個体の状態にもよりますが、1台約50~60万円。希少性があるとはいえ、それでもこの価格で堂々と販売されているということは、やはり一定のファンを持つバイクだからのようにも思います。 「今、KV75が50~60万円もするんですか? そんな高値で買う人がいるなら僕もちょっと考えちゃいますね(笑)。でも、そう思っても何故だか手放せないのがKV75の不思議なところで、今は外装などを外して保管しています。他のメーカーのレジャーバイク同様に、『これはこれ』の個性があると思います」(玉田さん)
松田義人(ライター・編集者)