知られざる“鉄道王国” 東京・北区が観光協会を設立する狙いとは?
2015年の訪日外国人観光客は過去最高の1973万人を記録し、2000万人に迫っています。観光産業は裾野が広く、飲食をはじめ宿泊・レジャーなど、影響は多産業に渡ります。経済効果も見込めるため、市町村でも観光産業の振興に取り組むようになっています。そんな中、東京・北区では「観光協会」を2016年度中に立ち上げるための準備を進めています。 【図】山手線に30番目の新駅 「駅名」ってどう決まるの?
誰もが知るメジャーな観光資源はない
北区は埼玉県と接し、名前の通り東京23区の北に位置しています。昨今は、立ち飲み街で話題になっている赤羽も北区です。しかし、これまで「観光」で目立つことが少なく、あまり観光というイメージがありません。どうして、観光協会を立ち上げることになったのでしょうか? 「北区では、『北区の魅力とは何だろう?』という出発点から、2007(平成19)年に観光について考えるようになりました。桜の名所として知られる飛鳥山など、北区は歴史ある名所を抱えています。他方で、台東区の浅草雷門、墨田区の東京スカイツリーのように、誰しもが知っているようなメジャーな観光資源はありません。そうした弱点を補うため、2016年度内に観光協会を立ち上げることを目指したのです」(北区地域振興部) 北区は行政の中心である王子、多くの人でにぎわう赤羽、山手線の駅があって交通の要衝になっている田端、商店街が人気の十条など、エリアごとに強い個性を持っています。その一方で区の一体性が欠け、北区のイメージが沸きづらくなっています。観光協会の設立は、観光政策を推進するとともに、これまで目立たなかった北区の存在感を大きくする目的があると言えます。
鉄道スポットに多くの鉄道ファン
これまでも北区は観光にまったく力を入れていなかったわけではありません。以前から、北区は、“テツ分増量プロジェクト”と銘打った観光振興を打ち出していました。 北区内にはJRの駅が11駅あり、23区では最多を誇ります。区内には山手線・京浜東北線・東北本線(高崎線・宇都宮線)・埼京線といったJR路線が走っているほか、東京メトロ南北線や都電荒川線などもあります。そのほか、区内には東京新幹線車両センター・尾久車両センターといった鉄道スポットがあり、多くの鉄道ファンが訪れています。 知られざる“鉄道王国”でもある北区は、以前にもJR東日本と協力してオリジナル駅弁をイベントで限定販売したことがあります。また、車両センターの近くにある区立昭和町図書館にも鉄道本の特設コーナーを設置して、情報収集・情報発信に努めているのです。