金井宇宙飛行士がJAXAで会見(全文4)ミッション期間中の実験などについて
インクリメントマネージャの実績の実例
次のポイントなんですが、JAXAのインクリメントマネージャの実績の1つの例なんですが、去年の5月にタンパク質の結晶の回収を、緊急的に行ったということがございます。タンパク質の結晶生成というのは、どのインクリメントでも非常に重要だというふうに考えてございまして、最重要ミッションの一角を担っているものでございますが、非常に生もの、タンパク質は生ものですので、実験期間の制約が非常に厳しいんですね。あんまり長く軌道上にいると、せっかくできた結晶が悪くなってしまうという、ちょっと難しい条件がございます。 そういったタンパク質の実験を行うときに、打ち上げる輸送機と、それから帰還の輸送機、あらかじめ決めて、それで最適な、実験期間に合ったタンパク質で実験するんですが、どうしても輸送機はいろんな外的な要因からスケジュールがずれてしまうことがあります。 で、去年の5月なのですが、もともと回収に使おうと思っていた、ソユーズ宇宙船が1カ月以上遅れてしまって、タンパク質、本当は1か月ちょっとぐらいで返したかったのが、2か月以上軌道上にいることになってしまって、こうなってはちょっと実験が失敗してしまうリスクも高くなってしまうということで、急遽、別の宇宙船に載せて回収するという調整をNASAにかけました。これは本当に例外的な、緊急的なものでございまして、通常こういった輸送機の変更というのは1か月以上調整に時間をかけるものですが、そのときはもう1週間ぐらいで載せ替えるということをして、うまく、地球上に回収することができて、そのタンパク質もあとで解析した結果、十分いい構造のデータが取れたという成果が一応、得られているというふうに考えてございます。 ここまで私のほうからご説明でして、このあと利用の目標とか、そういう話は松本のほうから説明させていただきます。
「きぼう」の成果最大化へ利用戦略立てる
松本:「きぼう」の利用の、もう少し実験のほうに入っていきたいと思います。 まず、きぼうを使った実験ですけれども、振り返りますと2008年から科学的な利用が始まりました。初期の5年ぐらいは、規則的な、科学的な実験を通じて科学的な成果を出していこうと。それからそういった実験を通じて日本の運用、実験運用の技術を磨いていくということを実施してきました。で、それ以降2012年ぐらいから、きぼう利用シナリオというのを制定しまして、もっと重点的に、何か戦略的にできないかということが始まってきたわけです。で、それを今、さらに進めまして、きぼう利用戦略というのを出しています。その利用戦略に基づいて実験を実施して、「きぼう」の成果最大化につなげたいということを目標に抱えております。 こちらのスライドにありますように、今どういう目標を立てているかと申しますと、5つの目標。真ん中辺にありますけども、5つの目標を立てまして、それをいかに達成していくかっていうのが、一番右側の縦のチャートです。具体的に申し上げますと「きぼう」を利用するプラットホームと。プラットホーム化というのを図っています。今現在、プラットホーム化されているものとして、ここにある4つ。新薬設計支援プラットホーム、それから加齢研究支援研究支援プラットフォーム、それから、超小型衛星放出、それから船外ポート利用という形でプラットホーム化を図っている。 さらに今、引き続き開発を行っているものがございまして、それも近い将来こういう形で引き揚げていくという形になろうかと思います。で、これをさらに進めまして、2024年までを目指して、もう少し官民が入ってきた形で利用していくということを目指してございます。