金井宇宙飛行士がJAXAで会見(全文4)ミッション期間中の実験などについて
長期の有人宇宙滞在技術や新薬設計につなげたい
先ほどからありますように、金井ミッション期間中のメッセージとして、健康長寿のヒントは宇宙にあるというメッセージを出しています。たまたまなのか、巡り合わせがいいのか分かりませんけども、この期間で実施する宇宙実験の11ミッションぐらいは医学だとか、薬学とか、そういった実験になります。で、ここで出していますのは2つ打ち出しておりますが健康長寿ですね。健康長寿に関する課題解決型研究に貢献するということです。 もう少し具体的に申し上げますと、宇宙の環境っていうのは金井飛行士からもありましたように、骨量の低下だとか、それから筋力低下、それからバランス感覚ですね。そういったものが地上にいるよりも加速的に進行していくという、そういうことが特徴かと思います。そういったことをうまく使って医学的な研究をする、薬学も含めてやると。それからもう1つは宇宙の大きな特徴の1つとして、滞留が発生しないと。それをうまく使うと非常に高品質なたんぱく結晶ができると。それをうまく使いながら製薬とかにつなげていくわけです。そういった特徴を生かして生物の応答メカニズムを解明したり、それからそれに基づいて新薬の設計だとか、それから疾患の対応の医療的なことにつなげていきたいというのがまず、1つです。 それから2番目として掲げていますのは、長期滞在ですね。より長期の有人宇宙探査の技術に向けての「きぼう」をうまく使っていこうということです。で、技術実証として使っていくというのは1つの活用の仕方かなというふうに考えてございます。で、具体的に申し上げますとこの期間で、水再生の技術実証というのが入ってきます。これ、具体的に申し上げますと、尿を飲める水にきちんと再生していくという技術になります。これ、今、開発を続けておりますけども、こういったことの開発を通して長期の有人宇宙滞在技術につなげていきたいと。それを「きぼう」を使って知識を増やして、技術を磨いて、長期の探査に結びつけたいというのが1つの、もう1つのところです。 もう少し具体的な実験内容に踏み込んでいきたいと思いますけども、今、ここで掲げてございますのは、3つほど、代表例として挙げさせていただいています。まず1つ目、小動物飼育ですけども、これは宇宙ストレスですね、宇宙ストレスって主に2つを想定していますけども、1つは放射線による参加ストレスでございます。それからもう1つは無重力になったことによってメカニカル、機械的なストレスを受けると。で、それに対して、どういう影響を受けるのかなっていうのを解明したいわけです。で、そこに着目した先生がいらっしゃいまして、ここに掲げてます、環境応答型転写因子Nrf2っていうのがございます。で、これを、この転写因子がどのように働くか、すなわちDNAがRNAに転写されますけども、そのときに中間に触媒みたいな形として働くのがこの転写因子でございます。 で、マウスを使いまして、この影響を調べるわけですけども、2種類のマウスを用意します。1つはこのNrf2っていうのがきちんと備わったマウス。もう1つはこれを欠損させたマウス、その2種類を使って、その違いを見ていくと、そんな研究が進められていくということです。 それから、タンパク質の結晶成長はこれまでも引き続きやっていくものですけども、だいぶJAXAとしてもタンパク質の結晶成長技術を身に付けてまいりました。それを生かしてもっと幅広いタンパク質ですね、いろいろなタンパク質ございますので、そういったものについてもさらに適用していくということでございます。で、最終的には創薬の研究基盤としての価値を目指していくということです。 それから最後、3つ目に挙げましたのは先ほど申し上げましたけども、水再生技術の実証ということです。これはどういうことを目指しているかというと、より小型、コンパクト、高効率というものを目指したものでして、ここに掲げているような数値目標を立てまして、それを実証するということになります。