海上自衛隊が「無人潜水艦隊」を創設か!? 将来に向けて研究が進む国産無人潜水艇【自衛隊新戦力図鑑】
今、日本の最前線となっているのが、九州から台湾に向けて弧状に延びる南西諸島と、その周辺海域である。東西1000kmにおよぶ、この広大な海域の警戒監視のため、海上自衛隊は大型無人潜水艇の研究を進めている。 TEXT:綾部剛之(AYABE Takayuki)
なぜ無人潜水艇なのか?
この10年で中国の海洋戦力は質・量ともに大きく増強され、南西諸島はもちろん西太平洋にまで、その活動領域を広げている。こうした中国の動きに対して、平時から警戒監視・情報収集を担っているのが「海の忍者」こと、海上自衛隊の潜水艦部隊である。海中に潜み、動きを察知されにくい潜水艦は、こうした任務に適している。中国による脅威の高まるなかで、海上自衛隊の潜水艦部隊は以前の18隻体制から22隻体制へと増勢された。 だが増勢したとはいえ、警戒監視任務の負担は大きく、また隊員数の慢性的な不足に苦しむ海上自衛隊にとって、潜水艦をこれ以上増やすことも難しい。そうしたなかで「水中優勢を獲得・維持するため」早期の装備化を目指して研究が進んでいるのが無人潜水艇であり、実用化に向けた研究のため、防衛装備庁 艦艇装備研究所において「長期運用型UUV」が試作された。
10mを超える大型無人潜水艇「長期運用型UUV」
「UUV」とは「Unmanned Underwater Vehicle」の略で「無人水中航走体」と訳される。UUVは、すでに機雷捜索の用途で海上自衛隊に導入されているが、これら既存のUUVが母艦の近くで運用される短距離・短期間のものであるのに対して、現在研究中の長期運用型UUVは文字通り、広い海洋における長距離・長期間の活動が見込まれている。 大きさもまったく異なる。既存の機雷探知用UUV「OZZ-5」が全長4m・直径0.5m程度であるのに対して、長期運用型UUVは航行に必要な基幹部分(本体モジュール)だけで全長10m・直径2m程度とかなり大きい。大型化した理由の一つは、長期運用に必要な動力源の搭載だ。長期運用型UUVの巨体のかなりの部分は、リチウムイオン電池を搭載する区画が占めている。 長期運用型UUVは、モジュール構造を採用している。先頭部分が航行に必要な各種のセンサーを搭載した「頭部モジュール」、次にリチウムイオン電池を搭載した「エネルギーモジュール」、最後がスクリューや舵など推進装置を備えた「尾部モジュール」である。これら航行に必要な機能を備えた3つのモジュールをまとめて「本体モジュール」と呼ぶ。さらに、警戒監視や海洋観測など機能別の追加モジュールを組み込むことで、多様な任務に対応できる設計となっている。