海上自衛隊が「無人潜水艦隊」を創設か!? 将来に向けて研究が進む国産無人潜水艇【自衛隊新戦力図鑑】
自律航行の技術的ハードル
その能力に期待が高まる長期運用型UUVだが、実用化には大きなハードルがある。それが人工知能(AI)による自律航行能力、つまり「UUVが自らの判断で航行して、任務を遂行する能力」である。さて、「無人機」といっても空中や地上、水上の無人機の多くは人間によって遠隔操作されている。なぜ、水中のUUVには自律能力が必要なのだろうか? 理由は水中では電波の減衰が激しく、無線通信ができないためだ(同様の理由でGPSも使えない)。 自律航行の何が難しいのか。「A地点からB地点まで向かう」というのは、簡単に思えて機械に実行させるのは、とても難しい。あなたが「とある駅から、目的のレストランへ」移動する状況を想像してほしい。まず「自分の位置を正確に把握」し、「向かうべき方向や距離を理解し」移動を開始する。UUVは、これを真っ暗な深海で行わなければならない。 トラブルに遭遇することもあるだろう。道路工事で通行止めになっていたら「別ルート」を考えなくてはいけない。事故に遭遇してしまったら「自分の状況を確認し、そのまま向かうか、帰るか」の判断が求められる。UUVも、不測の事態への対処と判断を自分で行わなくてはならない。そもそも「不測の事態が発生した」ことをUUV自身が認識できなければならない。 防衛装備庁では、長期運用型UUVの頭脳・思考とも言える管制ロジックの精度を高めるため、実際の海洋に加え、コンピュータ・シミュレーションを活用して運用データの収集と蓄積を行っている。 さて、以上のように実用化に向けて課題も多いが、長期運用型UUVが目指すコンセプトは広大な海洋を抱える日本の防衛において、とても重要な役割を担うことは間違いない。研究の推移に注目していきたい。
綾部 剛之