約15億円の赤字転落…横浜DeNAはプロ野球界を襲う新型コロナ禍の経営危機をどう乗り越えるのか?
「試合数が減ったにもかかわらずスポンサーの皆様と放送局関係の放映権料を満額いただけたことが要因です。地域へのベイスターズの貢献を評価していただきコンテンツ価値を認めていただけました。今季も引き続きスポンサーの皆様の支援をいただくための努力をしていかねばなりませんし、さらにファンの方々との接点を強く持つことが重要になってきます」 木村社長が存続の危機までに至らなかった事情をこう明かす。 「コミュニティボールパーク」化構想を提唱。ファンとの密接な関係を保つために様々な施策を打ち出してきた。特に2017年からは、これらの活動をスタジアム周辺から横浜地域全体に発展させた「横浜スポーツタウン構想」をスタートし地域貢献に寄与してきた。それらの活動と実績が評価され、横浜において確立したブランド力が生きたのである。 経営打撃を乗り切るには支出の削減も必須条件になる。だが、支出の大部分を占める選手年俸には手をつけなかった。そもそも野球協約にこういった災害で大幅に試合数が減った場合の特記事項がなく、球団個々のレベルではなく、NPBが選手会と折衝しなければならない問題なのだが、横浜DeNAも一律ダウンベースからの査定はしなかった。チーム成績が4位に終わったこともあり、総年俸で約2億円程度下がったが、これは、ほぼFAで巨人に移籍した梶谷、井納の2人分に相当するもの。木村社長は、「新型コロナは関係なく選手にはキャンプイン前に査定方法を説明しています。その約束は守らねばなりません。今後もこの状況が続くとなると、話し合いをしてもらわねばならないかもしれませんが…」と説明した。また球団職員の人員整理などの合理化も進めなかった。 球団経営としては耐えた1年だった。 12球団からひとつも“コロナ倒産球団”が出ることなかった裏には、広告名目での親会社から出ている“損失補填”と内部留保金の存在があるとも見られる。 黒字経営を続けていた巨人、阪神、広島は、その内部留保金で新型コロナ危機になんとか耐えたとされる。2011年に経営権を取得して以来、5年で黒字化に成功した横浜DeNAにも、ある程度の内部留保金があったようで親会社であるDeNA本体もストリーミング事業などが好調だった。 木村社長は、今回の教訓から「5年をスパンに何かあったときの蓄えをしておく必要があります。通常の場合、積極的な投資が必要なビジネスですが、すべてをそこに回すのではなく、こういう事態が起きたときの準備が必要」という。 しかし「いつまで耐えられるのか」という深刻な問題は消えない。 木村社長は、「この状況が1年、さらにもう1年続くとなると、スポンサーの皆様も、もう今まで程の価値・メリットを感じていただけないかもしれない」と危機感を抱く。 そこで模索しているのがウイズコロナの時代の新しいビジネススタイルだ。