堂安がシリア戦で体現した「モダンなスタイル」とは何だ?
アジアカップで離脱した4試合を除いた30試合すべてで出場し、7ゴールをマークした2023-24シーズンのフライブルクでも、シャドーだけでなく右ウイングバックでもプレーした。未知だったポジションでつかんだ手応えは、もちろん森保ジャパンにも向けられる。3バックで臨むときには、新境地にトライしたいと堂安は公言していた。 「フライブルクではウイングバックが点を取る役割を託されていた。もしこのチームでも同じポジションを託されるのならば、守備的な要員ではないと思っている」 シリア戦の前半は板倉滉(27、ボルシアMG)を中央に、左に町田浩樹(26、ユニオン・サンジロワーズ)、右に冨安健洋(25、アーセナル)が3バックを組んだ。それぞれの守備範囲が広く、しかも個の力で相手の攻撃に対応できる。だからこそ、左右に攻撃的なウイングバックを配置する上でのまたとない機会にもなった。 攻撃的なウイングバックを通して思い描くのは、堂安をして「モダンなスタイル」と言わしめるサッカーだ。アタッカーを本職とするウイングバックが、縦へのスピードやタッチライン際を上下する動き以外で相手を押し込む。堂安が声を弾ませる。 「それほどスピードがなく、サイドバックでもない選手がウイングバックでプレーして、ポジショニングやコンビネーションなどでサイドを制圧する。間違いなく現代サッカーを象徴するような形ですし、実際にやっていてすごく楽しかった。フライブルクで培ったものを、日本代表にも少なからず落とし込めたかな、という手応えはあります」 森保一監督(55)も、ドイツの地で進化を遂げる堂安に注目していた。シリア戦を翌日にひかえた10日の公式会見。指揮官は「チームとして戦術の幅を広げられるように試したい」と、堂安の右ウイングバック起用に言及しながらこう語っていた。 「彼がフライブルクのウイングバックとして攻守両面で献身的に走り、相手ゴール前で得点に絡むだけでなく、守備でも自軍のゴール前に戻って相手の攻撃を防いでいる。彼のように攻撃に特長があり、得点に絡めるうまい選手がハードワークして、攻守でチームに貢献する姿を期待したいし、将来プロや日本代表を目指す少年少女に見てほしい」 ガンバ大阪からヨーロッパへ挑戦の場を求めて7年もの月日がたつ。カタールW杯ではドイツ、スペイン両代表戦で同点ゴールを叩き込み、世界を驚かせる逆転勝利への狼煙をあげた男は、ハードワークするのは当たり前と言い切る。